子どもの好き嫌いは、調理の工夫や食事の環境づくり、言葉がけなどを組み合わせることで、無理強いをせずに少しずつ和らげていくことができます。
本記事では、切り方や調理方法の工夫、味付けや盛り付けの工夫、食事のスケジュール管理、食卓の環境づくり、食に関するお手伝い、言葉がけや心理面でのアプローチ、こだわりや見通しのサポートという7つの観点から、子どもの好き嫌いを克服させるための30の方法を紹介します。
7つの観点で好き嫌いに向き合う
まずは記事全体の見取り図として、7つの観点を一覧にまとめます。
| 観点 | 主な工夫のポイント |
|---|---|
| 切り方や調理方法 | 食感や噛みやすさ |
| 味付けや盛り付け | 風味の工夫と見た目 |
| 食事のスケジュール | 空腹感をつくる時間管理 |
| 食卓の環境 | 集中しやすい雰囲気づくり |
| 食に関するお手伝い | 食への主体的な関わり |
| 言葉がけや心理面 | 安心感と挑戦する気持ち |
| こだわりや見通し | 認知的な特性への配慮 |
切り方や調理方法を工夫する(4選)
切り方や調理方法を少し変えるだけで、子どもの食べやすさは大きく変わります。口に入れたときの食感や噛みやすさに着目した工夫を紹介します。
ミキサーで細かく潰す
嫌いな野菜をミキサーなどで完全にすりつぶして形をなくすことで、見た目や匂いによる警戒心を和らげます。幼児期の野菜嫌いは、野菜独特の強い匂いや苦味、見た目の色に対する抵抗感が要因の一つとされています。実際に幼児期の野菜の偏食に関する調査では、嫌いな野菜が食べられるようになった理由として、調理方法を変えて食感や見た目を工夫したことが多く挙げられています。茹でた野菜をミキサーにかけたり裏ごししたりして完全に潰し、おやつの生地に混ぜ込む方法は、素材特有の青臭さや繊維質な口触りを感じにくくし、子どもの成功体験につながります。
(出典:東海学園大学|大学生を対象とした野菜の偏食に関する調査)
一口サイズに大きさを統一する
食材を子どもの口の大きさに合わせた一口サイズに統一することで、咀嚼や飲み込みにくさによる拒絶を防ぎます。子どもは、口の中でまとまらないものや噛み切れない大きさの食材に対して不快感を抱くことがあります。おかずをすべて一口サイズに切り揃えて形や大きさを統一することで、安心して口に運びやすくなります。咀嚼や飲み込みがスムーズになることで、食事中の食べられないというストレスが軽減され、自分からスプーンを進めるきっかけになります。
奥歯の生え方に合わせて硬さを変える
子どもの口や歯の発育段階に応じた食材の硬さを提供することで、噛めないことによる偏食を防ぎます。子どもが食べる力を育むためには、歯と口の機能の発達に合わせた調理が役立ちます。特に1歳半から3歳頃にかけて奥歯が噛み合い始め、咀嚼や飲み込みの基礎が形づくられます。この時期に奥歯の生え具合を確認しながら、噛みごたえのある食材を段階的に取り入れ、咀嚼する力を育てていくことが、その後の食習慣につながります。
皮をむいて食感をなめらかにする
トマトやなすなどの皮の食感を嫌がる場合、皮をむくことで食べやすさが変わります。皮の口当たりや繊維質な感触に抵抗を示す子どもは少なくありません。湯むきをして皮を取り除いたり、皮の薄い部分だけを使ったりすることで、口当たりがなめらかになり、抵抗感が和らぎます。皮ごと調理する場合は、細かく刻んで食感を目立たなくする工夫も組み合わせると効果的です。
味付けや盛り付けを工夫する(4選)
味覚が敏感な時期の子どもには、味を覆い隠す工夫や、視覚的な楽しさを演出する工夫が役立ちます。今日から試せる工夫を紹介します。
カレーに混ぜて風味を隠す
子どもに人気の高いカレーなどの濃い味付けに苦手な野菜を混ぜ、独特の風味や苦味を感じにくくします。幼児期や小学生の苦手な野菜の多くは、味やにおいが原因で拒否されます。これらの苦手な野菜を細かく刻んでカレーやミートソースなどの味が濃い料理に混ぜ合わせることで、独特の苦味や香りを覆い隠すことができます。味の濃い料理をベースにする工夫は、家庭で今日から試せる調理アプローチの一つです。
おにぎりに絵を描く
おにぎりに海苔で顔や絵を描くなどの視覚的な工夫により、食卓を楽しい雰囲気に演出して食欲をそそります。毎日の食事作りに手間をかけられないときでも、ご飯をおにぎりにして海苔で簡単な絵を描くだけで、子どもの食事への向き合い方を受け身から前向きなものに変えることができます。視覚的な楽しさは、子どもが食卓に座った瞬間の警戒心をやわらげ、食事に対する明るい気持ちを引き出します。
最後に一つだけ乗せる
苦手な食材を全体に混ぜ込まず、仕上げとして一つだけ乗せることで、見た目の拒絶感を最小限に抑えます。料理の中に苦手な食材が大量に混ざっていると、それだけで全部食べたくないと警戒してしまう場合があります。生地や料理に最初から混ぜるのではなく、最後の一つだけを上にトッピングする工夫をすると、見た目の圧迫感が減り、一つだけなら挑戦してみようという気持ちを引き出すことができます。
好きな味付けと組み合わせる
苦手な食材を、子どもが好きな味付けと組み合わせることで、抵抗感を和らげることができます。マヨネーズやごまだれ、少量の甘みのあるたれなど、子どもが好んで食べる味付けと一緒にすることで、苦手な食材そのものの味を感じにくくすることができます。好きな味付けをきっかけに少しずつ食材に慣れていくことで、単体でも食べられるようになる場合があります。
食事のスケジュールを管理する(4選)
どれほど工夫した料理を用意しても、子ども自身にお腹が空いている感覚がなければ食べにくいものです。食欲を生み出すための時間管理の工夫を紹介します。
食事の前に体を動かす
日中に活発に運動してエネルギーを消費させることで、自然な空腹感を促し食事をしっかりとる土台をつくります。子どもがご飯を食べない要因の一つに、食事の時間にお腹が空いていないことが挙げられます。国が示す幼児期の栄養や食生活を支援するガイドでも、遊びの習慣をつけて空腹の状態で食事を迎えられるように支援することが勧められています。日中に散歩や公園遊びで体を動かすことで、多少苦手な食材であっても自発的に挑戦する意欲が高まりやすくなります。
(出典:国立保健医療科学院|幼児期の健やかな発育のための栄養・食生活支援ガイド)
食事の3時間前は間食を控える
おやつの与え方や時間の間隔を見直し、次の食事までしっかりと空腹の時間を確保します。次の食事でしっかりとした食欲を持たせるためには、食事と食事の間隔を三時間から四時間ほどあけることが役立ちます。子どもがぐずったときにお菓子をすぐに与えてしまう習慣は、次の食事時の食欲不振につながりやすくなります。おやつは栄養補給の一部と捉え、時間と量をコントロールすることが大切です。
規則正しい睡眠をとる
早寝早起きの習慣を身につけ、健やかな空腹感のサイクルをつくります。夜型の生活習慣は、朝食を食べられないことや食欲不振、朝の排便習慣の乱れと結びつきやすいとされています。早寝早起きを心がけて睡眠や食事の生活リズムを整えることは、子どもの自立心を育て、食事の場面で好き嫌いなく食べようとする意欲を高める土台になります。
毎日同じ時間に食事をとる
食事の時間を毎日一定に保つことで、体内時計が整い空腹のリズムができやすくなります。朝食や夕食の時間がその日によってばらばらだと、体が食事のタイミングを予測しにくくなり、食欲がわきにくくなる場合があります。できるだけ決まった時間に食卓に座る習慣を続けることで、その時間になるとお腹が空くという感覚が育ち、食事への向き合い方が安定しやすくなります。
食卓の環境を整える(4選)
食事をする場所の雰囲気や工夫も、子どもの好き嫌い克服を後押しします。食卓を安らぐ場にするための環境づくりを紹介します。
食事中のテレビを消す
テレビを消して食事や会話に集中することで、味覚や満腹の感覚がしっかりと働きやすくなります。食事中にテレビがついていると、子どもの関心が画面に向かい、食べ物をただ口に運ぶだけになってしまうことがあります。これにより、食べ物を味わう満足感が薄れやすくなります。テレビなどの刺激を取り除き、目の前の食事の色や形、匂いに意識を向けられる環境を整えることが、味覚の形成を促します。
同じ献立を繰り返す
一定の周期で同じ献立を提供することで、繰り返し体験しながら食材への警戒心を和らげます。子どもは、初めて口にする食材に対して本能的な警戒心を抱く傾向があります。これを和らげるには、同じ献立を繰り返し体験することが役立ちます。一週間や二週間の単位で似た献立を繰り返すと、一回目は食べなくても、周期的に巡ってくることで徐々にその食材の切り方や味に慣れていき、食べる割合が高まりやすくなります。
友達と一緒に食べる
家庭だけでなく、保育園や幼稚園での集団の力を利用して、友達の食べる姿を刺激にします。家庭ではわがままを言って残してしまう食材でも、園や学校の給食の時間に、友達が楽しそうに食べている姿を見ることで、自分も食べてみようと口にする子どもは少なくありません。集団の中で友達と一緒に食べることは、家庭だけでの取り組みを補う心強い後押しになります。
家族と同じ料理を取り分けて食べる
子どもだけ別メニューにするのではなく、家族と同じ料理を取り分けて食べることで、食への安心感を育てます。大人が食べているものを子どもも一緒に食べているという状況は、家族の一員として食卓を囲んでいる実感につながります。味付けや大きさは調整しながらも、同じ料理を取り分ける形にすることで、子どもは食材への警戒心を和らげやすくなります。
食に関するお手伝いをさせる(4選)
食べるだけでなく、食の前後にある育てる、準備するといった過程に子どもを関わらせることで、主体的に食べようとする気持ちを育てます。
簡単な配膳や片付けをする
食器を運ぶなどの簡単な手伝いを通じて食卓づくりに参加させ、食事への前向きな関心を高めます。幼児期は、大人がしていることに関心を示したがる自立心の芽生えの時期です。配膳やスプーンを並べる、食べ終わった食器を片付けるといった簡単な手伝いを任せることで、食への自発的な関わりが促されます。手伝いをよくする子どもは、食事マナーが身につきやすく、嫌いなものが少ない傾向にあることが調査で示されています。
(出典:岐阜市立女子短期大学|保護者の生活習慣が幼児の食生活におよぼす影響)
ベランダや庭で野菜を育てる
ミニトマトやイチゴなどを自分で育てることで、食材への親しみと食べてみたいという気持ちを引き出します。ベランダのプランターや小さな菜園でも、自分で苗を植えて水を与え、日々の成長を観察する体験は、子どもにとって驚きと喜びの体験です。食材が口に運ばれるまでの過程を身近に実感することで、食への関心が深まります。自分が育てて収穫した野菜であれば、苦手な食材であっても口にするきっかけになりやすいものです。
料理の一部を一緒に作る
ちぎる、混ぜるなどの安全で簡単な作業から調理に参加させ、自分の作った料理への自信と愛着を引き出します。子どもは幼い頃からお手伝いをしたいという欲求を持ち始めます。野菜を洗う、レタスを手でちぎる、調味料を混ぜるといった作業から料理に参加させることで、食材が料理に変わる過程を実体験できます。自分が調理に関わり完成させたという達成感が、苦手な食材でも自分で作ったから食べてみようという前向きな姿勢につながります。
一緒に買い物で食材を選ぶ
スーパーや市場で一緒に食材を選ぶことで、食べ物への関心と主体性を育てます。並んでいる野菜や果物の色や形を見比べたり、今日の献立に使う食材を子どもに選んでもらったりすることで、食材そのものへの興味が高まります。自分で選んだ食材が食卓に並ぶという経験は、その食材を口にしてみようという気持ちにつながりやすくなります。
言葉がけや心理面で促す(6選)
叱ったり強制したりするアプローチは逆効果になりやすいものです。子どもの心理を前向きに動かし、自発的な一口を引き出すための言葉がけを紹介します。
食事の挨拶を元気よく行う
食前のいただきますを保護者がしっかりと促し、食事への気持ちの切り替えと期待感を高めます。いただきます、ごちそうさまという食事の挨拶を丁寧に行う習慣は、食事に対する関心を高める心理的な効果があります。挨拶を日頃から促している家庭の子どもは、自ら挨拶をするようになり、朝食をしっかり摂る、よく噛む、苦手なものでも努力して食べるといった前向きな食行動につながりやすいとされています。
少しでも食べたら大げさに褒める
一口でも食べられたときや、苦手なものを少しでも口にできたときに、自信を持たせるように褒めます。苦手なものに挑戦するとき、子どもには勇気が必要です。一口でも食べられたら、食べられたね、すごいねと大げさなほどに褒め、頑張りを認めて自信を持たせてあげます。褒められた記憶と成功体験は、次に別の食べ物に挑戦する原動力になります。叱るのではなく、できたところに焦点を当てる言葉がけが、子どもの挑戦する気持ちを支えます。
大人がおいしそうに食べる
大好きな保護者がおいしいねと笑顔で食べる姿を見せ、食材に対する安心感を与えます。経験のない子どもにとって、初めて食べる食品や苦手な食品は不安の対象です。子どもには身近な大人の真似をする性質が備わっています。信頼する親や保育士が、苦手な食材をおいしいと笑顔で食べる姿を見せることで、子どもはこれは安心して食べられるものだと感じ、自分からスプーンを口に運びやすくなります。
無理やり食べさせない
嫌がるものを無理に口へ押し込んだり強制したりせず、食卓の雰囲気を優先します。残さず全部食べなければいけないと厳しく求め、食事の時間を苦痛にしてしまうことは、子どもの食べようとする気持ちを弱めてしまいます。無理やり食べさせられた記憶は苦手意識をさらに強め、食事の時間そのものを避けたい時間に変えてしまうことがあります。食べられない日があってもよいと割り切り、食卓が安らげる場所であることを大切にしましょう。
好きな食べ物と一緒に盛り付ける
苦手な食材を、子どもが好きなおかずと同じ皿に並べることで、食卓への警戒心を和らげます。好きなものが視界に入ることで、食卓全体への安心感が生まれやすくなります。苦手な食材だけを別皿にせず、好きなおかずと一緒に並べておくことで、子どもが自然と箸を伸ばすきっかけになる場合があります。
一口だけ挑戦しようと目標を小さく提案する
全部食べることを求めるのではなく、一口だけ挑戦してみようと小さな目標を提案します。全部食べなければいけないという要求は、苦手な食材に対する抵抗感を強めてしまいがちです。一口だけ食べてみようという小さな目標であれば、子どもにとって挑戦しやすいハードルになります。達成できたときにしっかりと認めることで、次への意欲につながっていきます。
こだわりや見通しをサポートする(4選)
特に好き嫌いが激しい時期や、こだわりが強い子どもに対しては、見通しや慣れをサポートする工夫が手がかりになります。
食事の終わりや次の順番を明確にする
ここまで食べたら終わり、次はこのおかずというように、あらかじめ見通しを明確にし、安心感を与えます。偏食への困り感が高い子どもは、先の見通しが立たないことに不安を抱く傾向があります。この点については、一口サイズに切り揃えたお肉を三個食べたら今日のおかずは終わりというように、終わりや次のステップを具体的に伝える対応の効果が高いことが、自閉症児を対象とした調査でも報告されています。
(出典:四條畷学園大学ほか|自閉症児の食嗜好の実態と偏食への対応に関する調査研究)
お気に入りのメーカーの商品を使う
食材の味や見た目を頻繁に変えず、子どもの慣れを尊重して特定のブランドやメーカーの商品を使い続けます。初めての食べ物や変化に敏感な子どもは、なじみのあるものに対して安心感を持ちやすい傾向があります。これを無理に変えようとして毎日新しいメニューを出すのは逆効果になることがあります。まずは決まったメーカーの決まった商品を土台にし、そこから少しずつ他の食品へと広げていく進め方が向いています。
食べ物が体に届く流れを教える
食べたものが体の中でどのように働くかを分かりやすく説明し、知的な興味から食べる動機を引き出します。三歳を過ぎると、子どもは自分の体や排泄に興味を持ち始めます。食べたものがお腹の中で働いて元気のもとになるということを、絵本や簡単な説明を使って伝えることで、子どもは苦手な野菜も体の中で役立ってくれるのだと納得しやすくなります。
使う食器やお皿を統一する
いつも同じ食器やお皿を使い続けることで、食卓に対する安心感を育てます。食器の色や形が毎回変わると、それだけで警戒心を抱く子どももいます。決まったお気に入りの食器を使い続けることで、食卓全体が見慣れた安心できる場所として認識されやすくなります。慣れてきたら少しずつ違う食器も取り入れていくとよいでしょう。
まとめ
子どもの好き嫌いは、味覚の発達や初めての食べ物への警戒心など、成長の過程で起こりやすい自然な現象です。今回紹介した調理の工夫、スケジュール管理、食卓の環境、お手伝い、言葉がけ、認知的な配慮という30の方法は、子どもの食べる力を無理なく育むための実践的なアプローチです。
大切なのは、一口も食べてもらえない焦りや残さず食べさせなければという義務感から、無理やり食べさせて食卓を苦痛の場にしないことです。親子の良好な関係と穏やかな食卓の雰囲気が保たれていてこそ、子どもは安心して新しい食べ物に挑戦できます。焦らずに、子どものペースや興味に合わせて今日から試せそうなものを一つずつ取り入れ、毎日の食事が家族にとって心地よい時間になるよう進めていきましょう。


