幼児期に絵本を読み聞かせるメリットは?発達効果や読み方のコツを紹介

教育・知育

幼児期の絵本の読み聞かせは、言葉の力や想像力を育てるだけでなく、運動や社会性といった幅広い発達を支え、大人になってからの自己肯定感にもつながっていくことが、複数の調査から分かっています。忙しい毎日のなかで読み聞かせの時間をつくること自体が、子どものこれからの成長にとって意味のある時間になります。

本記事では、乳幼児期の絵本読み聞かせで得られる発達効果、保護者による読み聞かせの実態、子どもの成長を後押しする読み方のコツ、年齢や発達段階に応じた絵本の選び方、そして絵本の読み聞かせが持つ意義について解説します。

乳幼児期の絵本読み聞かせで得られる発達効果

絵本の読み聞かせは、言葉の力だけでなく、体の動きや心の育ちまで含めた幅広い発達を支えることが、大規模な調査から確認されています。ここでは、次の4つの観点から発達への効果を紹介します。

  • 3歳時点で5つの発達領域のスコアが伸びること
  • 1歳時点で発達の遅れがみられた子どもにも改善がみられること
  • かな文字を読む力や気持ちを理解する力が育つこと
  • 大人になってからの自己肯定感や社会性にも関わること

3歳時点で5つの発達領域のスコアが伸びる

絵本の読み聞かせを頻繁に行っている子どもほど、3歳時点における主な発達領域のすべてで高いスコアを示すことが、大規模な調査から明らかになっています。絵本を通じた言葉のやりとりや、イラストを介したイメージの共有が、子どもの脳にさまざまな刺激を与え、認知面だけでなく体や社会性の発達も合わせて促していると考えられているためです。

この結果は、環境省が進める「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加する約3万6,000組の母子のデータを解析した、大規模かつ長期にわたる調査から導かれたものです。発達の進み具合を測る「ASQ-3(月齢ごとの発達の目安をたずねる質問紙)」が指標として使われており、読み聞かせを週5回以上行うグループは、ほとんど行わないグループと比べて、3歳時点の発達スコアがすべての領域で高い結果を示しました。

出典:東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野|絵本の読み聞かせが子どもの発達全般に好影響を与えることを解明

ASQ-3が測定する5つの発達領域は、次の表のとおりです。

発達領域内容
コミュニケーション言葉によって気持ちや考えを伝え合う力
粗大運動走る、跳ぶといった体全体を使う動きの発達
微細運動手先や指先を細かく動かす力の発達
問題解決おもちゃの使い方を考えるなど、原因と結果を推測して対応する力
個人-社会身の回りのことや、周りの人との関わり方に関する発達

1歳時点で発達の遅れがみられた子どもにも改善がみられる

1歳の時点で発達の遅れが疑われた子どもであっても、その後継続して読み聞かせを行うことで、発達スコアがはっきりと改善することが分かっています。読み聞かせによる継続的な言葉の刺激や気持ちのやりとりが、神経系の発達を支えるはたらきかけとして機能すると考えられているためです。

この解析は、1歳時点でASQ-3のスコアが同年齢の平均を大きく下回り、発達の遅れが疑われる状態(確定診断ではありません)とされた乳幼児を追跡した調査にもとづいています。その後3年間、週5回以上の読み聞かせを継続したグループは、ほとんど行わなかったグループと比べて、3歳時点の発達スコアが大きく高い数値を示しました。この成果は、小児科学の分野で信頼性の高い国際学術誌「Pediatric Research」に2026年1月8日に掲載されています。

出典:東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野|絵本の読み聞かせが子どもの発達全般に好影響を与えることを解明

かな文字を読む力や気持ちを理解する力が育つ

幼児期の読み聞かせは、言葉の基礎となる「かな文字」を読む力と、他者の気持ちを推し量る「情動理解能力(相手の感情を読み取る力)」の両方の発達と関わりがあることが分かっています。絵本に登場する文字と、保護者の言葉で語られる登場人物の喜怒哀楽の両方に触れることで、文字を認識する力と、気持ちを理解する社会的なスキルが同時に育まれると考えられているためです。

この結果は、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)とポプラ社による共同研究「子どもと絵本・本に関する研究」から明らかになったものです。研究では、絵本の読み聞かせの「量(頻度など)」と「質(読み方や関わり方)」が、それぞれ異なる形で幼児の発達と関わっていることが示されています。この成果は、2024年12月20日発行の『発達心理学研究』第35巻第4号(227〜239ページ)に論文として掲載されました。

出典:東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)|【論文掲載】「絵本の読み聞かせと幼児のかな文字読み能力および情動理解能力の関係」に関する論文が『発達心理学研究』に掲載

大人になってからの自己肯定感や社会性にも関わる

幼児期の絵本の読み聞かせや読書の体験は、大人になってからの自己肯定感や社会性といった「非認知能力(テストの点数では測れない、意欲や協調性などの力)」の高さと関わっていくことが分かっています。幼いころに絵本を通じて育まれた豊かな感性や考える力、知的な好奇心が、大人になって自分らしく生きるための人格の土台になると考えられているためです。

この結果は、国立青少年教育振興機構が公表した、成人5,258人と中高生21,168人、合わせて26,426人を対象にした大規模な調査から導かれています。調査では、幼児期に読書の体験が豊かであった成人ほど、「未来志向」「社会性」「自己肯定」「意欲・関心」「文化的作法・教養」「市民性」のすべての領域で、現在の自己評価が高いという結果が示されました。特に、就学前から小学校低学年までの間の「家族からの読み聞かせ」や「絵本を読んだ体験」は、成人になってからの「文化的作法・教養」や「社会性」と強く関わっていることも分かっています。

出典:国立青少年教育振興機構|子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究

保護者が絵本の読み聞かせについてどう考え実践しているか

家庭での絵本の読み聞かせは、どのくらいの年齢から、どのくらいの頻度や時間で行われているのでしょうか。ここでは、次の3つの観点から実際の家庭の様子を紹介します。

  • 生後0か月から1歳の間に始める家庭が多いこと
  • 週2〜3回以上のペースで読み聞かせを行う家庭が多いこと
  • 1回10分から30分程度の時間で行われていること

生後0か月から1歳の間に始める家庭が多い

絵本の読み聞かせを始める時期として最も多いのは「生後0か月から1歳の間」であり、多くの家庭がこの時期から読み聞かせを実践しています。早い時期から言葉や本に親しむことの意味が広く知られており、乳児期は親子のアタッチメント(愛着形成)を育む貴重な機会だと考えられているためです。

奈良市内の幼稚園に通う4〜5歳児の母親112人を対象にした調査では、86.6%の母親が、読み聞かせの望ましい開始時期として「生後0か月から1歳の間」と回答しています。実際の行動としても、67.8%の保護者がこの時期に読み聞かせを始めており、意識と実際の行動が高い水準で一致していることが分かります。

出典:今井靖親・金貞蘭|幼児への読み聞かせに関する母親の考え

週2〜3回以上のペースで読み聞かせを行う家庭が多い

絵本の読み聞かせは、約8割の家庭で週2〜3回以上の頻度で行われており、日課のひとつとして定着しています。たまにまとめて読むよりも、一定のペースでコンスタントに絵本の時間を取り入れることが、子どもの習慣づくりや情緒の安定に役立つと考えられているためです。

同じ調査では、週2〜3回以上のペースで読み聞かせを行っている家庭が全体の約80%を占め、「かならず毎日」「ほとんど毎日」実施している家庭を合わせると全体の約34%に達することが示されています。また、母親の62.5%は、子どもが絵本を「求めなくなるまで」は長く読み聞かせを続けてあげたいと考えていることも分かっています。

出典:今井靖親・金貞蘭|幼児への読み聞かせに関する母親の考え

1回10分から30分程度の時間で行われている

1回あたりの読み聞かせにかける時間は、10分から30分程度が主流であり、親子どちらにとっても負担の少ない時間の範囲で行われています。子どもの集中力が続きやすく、かつ忙しい保護者にとっても取り入れやすい長さであることが、この時間配分が多い理由と考えられます。

同じ調査では、1日あたりの読み聞かせ時間として「10〜15分」または「20〜30分」と答えた家庭が全体の85%を占めています。絵本を読んであげる人(複数回答)としては母親が96.4%と最も多いものの、父親も58.9%、きょうだいも23.6%が読み聞かせに関わっており、家族全体で取り組んでいる様子がうかがえます。「子どもと並んで」(64.3%)や「布団に入って」(57.1%)という姿勢で行われることが多く、就寝前のリラックスした時間に取り入れられていることも分かっています。

出典:今井靖親・金貞蘭|幼児への読み聞かせに関する母親の考え

  • 平均時間:「10〜15分」または「20〜30分」という回答が全体の85%を占めています
  • 読み手の割合:母親96.4%、父親58.9%、きょうだい23.6%が読み聞かせに関わっています
  • 実施する姿勢:「子どもと並んで」64.3%、「布団に入って」57.1%という回答が多くみられます

子どもの成長を後押しする絵本の読み方

文字をただ音読するだけでなく、関わり方を少し工夫することで、絵本が持つ良さをより引き出しやすくなります。ここでは、次の3つの読み方のコツを紹介します。

  • 子どもと言葉をやりとりする会話型で読むこと
  • 気に入った絵本を繰り返し読むこと
  • 読み手自身の自然な声で読むこと

子どもと言葉をやりとりする会話型で読む

絵本の読み方としては、親子で言葉のやりとりが生まれる「会話型」の読み方が、子どもの主体的な学びを引き出しやすいとされています。ただ文字を読み上げるだけの受け身の読書から、問いかけや発見を交わす能動的な「読みあい」に変えることで、子どもが自分で考えたり気づいたりする余地が生まれるためです。

たとえば「うさぎさん、泣いちゃったね」「どのパンが食べたいかな?」のように、絵をさしながら子どもに問いかけ、やりとりを重ねながら読み進める方法があります。

気に入った絵本を繰り返し読む

子どもが同じ絵本を繰り返し持ってきたときには、そのたびに何度でも読んであげる「反復型」の読み方が向いています。子どもは繰り返し読んでもらうことで物語の展開を予測できるようになり、深い安心感を得ながら、登場する言葉や擬音などの表現をじっくり自分のものにしていくと考えられているためです。

繰り返しのフレーズやリズムの面白さは、幼い子どもにとって予測できる心地よさとなり、絵本そのものへの愛着を強くしていくと考えられます。

読み手自身の自然な声で読む

読み聞かせにおいて大切なのは、上手な朗読の技術ではなく、読み手自身の「自然な声」や、体を寄せ合うことによる非言語的なつながりです。子どもは物語の内容だけでなく、大人の声が持つ安心感やほほえみ、膝の上のぬくもりといった身体的な感覚も、あわせて受け取っていると考えられているためです。

脳の働きを調べる検証(NIRS、脳の血流の変化から働きを調べる方法)では、絵本の読み聞かせを聞いているときには、音読や黙読のときと比べて、聞き手の脳に心地よさやリラックスにつながる変化が見られることが確認されています。

専門家からは「マニュアルどおりではなく、自分に似合う声で読みあうことが大切」という指摘もあり、読み手が無理のない自然な声で読むことが、子どもの情緒の安定につながると考えられます。大学生を対象にした調査でも、大人になっても鮮明に残っている幼いころの思い出として、絵本の内容そのものよりも「祖母のやさしい声」「母の安心できる声」「膝の上や布団のぬくもり」といった、声や身体の感覚にまつわる記憶を挙げる例が多く見られました。

年齢や発達段階に応じた絵本の選び方

子どもの成長に合わせて絵本を選ぶことは、読書の習慣を無理なく続けていくうえで役立ちます。ここでは、次の3つの観点から選び方を紹介します。

  • 乳幼児期は言葉の響きやイメージを楽しめる本を選ぶこと
  • 小学生期はひとり読みへの移行を促す本を選ぶこと
  • 学習目的にこだわらず子どもの興味に沿ったテーマを選ぶこと

乳幼児期は言葉の響きやイメージを楽しめる本を選ぶ

乳幼児期には、周りの大人からのやさしい言葉かけに親しみながら、豊かなイメージや言葉の響きを楽しめる絵本が向いています。この時期は言葉をどんどん吸収していく時期であり、絵や語りかけを通じて頭の中に物語の世界を思い描き、それを純粋に楽しむ力が育っていくためです。

国の計画でも、乳幼児期には大人から言葉をかけられながら少しずつ言葉を身につけ、さまざまな体験を通じてイメージを広げ、物語の世界を楽しむようになるとされています。実際に家庭でよく読まれているのは「日常生活を描いた本」が最も多く、次いで「空想的なファンタジーを描いた本」「日本の昔話」が続いており、身近で温かみのあるテーマが好まれる傾向があります。乳児期から取り入れられている「ブックスタート(絵本を通じた親子のふれあいを促す活動)」などでも、家族間のコミュニケーションや情緒的なふれあいを促す本が向いているとされています。

小学生期はひとり読みへの移行を促す本を選ぶ

小学生期には、絵本を聞くだけの段階から、自分で読む「ひとり読み」への移行を無理なく促し、子どもそれぞれの好奇心や探究心を深められる本を選ぶことが大切です。学年が進むにつれて語彙の質や読むスピードが上がり、物語の場面を自分でイメージしたり、自分の考えと比べたりしながら読む力が育っていくためです。

おおむね6〜8歳の低学年では、読み聞かせを聞くだけでなく、自分から本を読もうとする様子が見られはじめるため、語彙を補い場面を想像しやすい、文字と絵のバランスが良い本が向いています。おおむね8〜10歳の中学年では、最後まで読み通せる子どもとそうでない子どもの違いが見えやすくなるため、自分の考えと比べながら主体的に読める本が求められます。おおむね10〜12歳の高学年では、好みの選書に個性が現れやすくなるため、科学や社会、新聞、さまざまな文学作品など、幅広いジャンルの本にふれられる環境を整えることが役立ちます。

学習目的にこだわらず子どもの興味に沿ったテーマを選ぶ

絵本を選ぶときには、勉強や学習の効果を優先するのではなく、子ども自身の関心や、身近な日常生活、空想の世界を描いたテーマを大切にすることがすすめられます。子ども自身が絵本を「楽しい」「面白い」と感じて自分から手に取ることが、結果として語彙力や認知面の発達を無理なく後押しすると考えられているためです。

マンガやアニメ、ゲームなど、本以外の興味から関連する絵本を紹介したり、動物や乗り物といった日常の関心に寄り添ったりすることも、読書の幅を広げるきっかけになります。

乳幼児期の絵本読み聞かせが持つ意義のまとめ

ここまで紹介してきた発達効果や実践方法をふまえ、絵本の読み聞かせが持つ意義を整理します。ここでは、次の3つの観点から紹介します。

  • 情緒の安定を支える愛着形成の場になること
  • 自分の気持ちと向き合う自己理解の機会になること
  • 保育の専門性が生きる教育活動になること

情緒の安定を支える愛着形成の場になる

絵本の読み聞かせは、子どもの情緒の安定を支える愛着形成(アタッチメント)の場のひとつであり、子どもの心の支えとなる安心感を育みます。保護者のやさしい声に包まれ、体を寄せ合って過ごす時間そのものが、子どもの情緒を安定させ、社会生活を送るうえでの自信や安心感を育んでいくと考えられているためです。

親とのハグや膝の上での抱っこ、絵本をゆっくり閉じる仕草といった身体的な体験は、物語の内容を超えて、子どもの心に安心の記憶として残っていきます。一冊の絵本を家族で読み、その内容について語り合う「家読」のような活動も、家族どうしの理解を深める手段として役立てられています。

自分の気持ちと向き合う自己理解の機会になる

絵本の読み聞かせや、そこから生まれる遊び、あるいはひとりで静かに読む時間は、子どもが自分自身の気持ちと向き合う「自己理解」の機会になります。物語の世界に浸ることで、子どもは主人公に自分を重ね、現実の中で感じた葛藤やさびしさ、うれしさといった気持ちを整理し、自分なりに受け止めていくと考えられているためです。

家庭では、絵本を読んだあとに「パンやお菓子を作る」「怪獣ごっこをする」といった遊びや創作活動へと自然に広がることも多く、これが楽しい記憶として残っていきます。家庭や園を問わず、ひとりで静かに物語の世界に浸る時間も一定数あり、これが子どものさびしさをやわらげ、自立を後押しする心の支えになっていると考えられています。

保育の専門性が生きる教育活動になる

集団での絵本の読み聞かせは、専門的な知識にもとづいて、想像力や感情の共有、教養、文字への興味、ふれあいといった複数の力をバランスよく促す、保育者にとって重要な教育活動です。保育の現場ならではの劇遊びや表現活動と絵本を組み合わせることで、子どもどうしの社会性や協力する力、役割を意識する力を、子ども自身の主体性を大切にしながら育てていくことができるためです。

5歳児クラスなどの実践では、絵本の読みあいから人形づくりへ、さらに人形に気持ちを託して役になりきる劇遊びへと展開し、役割分担や発表後の振り返りまでを通じて、子どもどうしの協力する姿勢が育まれていく例があります。読み聞かせを発表会のための単なる導入にしてしまわないよう、子ども一人ひとりの内側から生まれる感性を大切にしながら関わる、保育者や幼稚園教諭の専門性が求められています。

まとめ

絵本の読み聞かせは、言葉や想像力の発達だけでなく、情緒の安定や愛着形成、そして大人になってからの自己肯定感にまでつながっていく、子どもの成長を幅広く支える活動です。まずは今日の読み聞かせから、子どもと言葉を交わしながら、無理のない時間で一冊を選んで読んでみてはいかがでしょうか。