知育玩具は、遊び方を子ども自身が決められる余地を残すことで、発想力を着実に育てます。決まった正解のない遊びを重ねる経験は、自分なりの考えを形にする力を確かなものにし、日常のさまざまな場面でその力を発揮しやすくします。
本記事では、知育玩具で発想力が高まる仕組み、発達段階に応じた遊びの特徴、発想力を伸ばす知育玩具の選び方、そして知育玩具を使った実践方法について紹介します。
知育玩具で発想力が高まる仕組み
知育玩具は、遊びの自由度を通じて発想力を刺激します。ここでは、発想力が高まる仕組みを4つの側面から整理します。
- 創造性は直観・想像・思考の3つの働きで成り立つ
- 自由な素材との関わりが発想の幅を広げる
- 失敗を恐れない環境が発想力を後押しする
- 友達とのやり取りが発想の材料を増やす
創造性は直観・想像・思考の3つの働きで成り立つ
創造性の研究では、創造性がひらめきにあたる直観、新しいイメージを描く想像、イメージを形にする思考という3つの働きで構成されると整理されています。知育玩具を使った遊びは、この3つの働きを一連の流れとして経験させます。積み木の形を見て新しい使い方をひらめき、頭の中でイメージを広げ、実際に組み立てて形にする流れは、この3要素をそのまま体験する場になります。決まった手順を覚える練習とは異なり、遊びのたびに違う流れをたどれる点が特徴です。
出典:創造性の育成に関する研究|東京都教職員研修センター
自由な素材との関わりが発想の幅を広げる
幼稚園教育要領では、いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶことが表現の領域として位置づけられています。決まった形に固定されない素材ほど、子どもは自分なりの使い方を考えやすくなります。粘土や積み木のように扱い方が限定されない玩具は、同じ材料からいくつもの形を生み出す経験を可能にします。一つの材料を何通りにも使いこなす経験は、身の回りの物を工夫して使う視点にもつながります。素材への働きかけが自由であるほど、発想の幅は広がっていきます。
出典:幼稚園教育要領|文部科学省
失敗を恐れない環境が発想力を後押しする
創造性を促す条件として、失敗を恐れずに活動できる受容的な環境が挙げられています。子どもが思いついた形や遊び方を試したときに、大人がすぐに正誤を判断せず見守ると、子どもは次の発想も臆せず試しやすくなります。反対に、間違いを指摘される場面が続くと、決まった遊び方から抜け出しにくくなる可能性があります。安心して試せる環境そのものが、発想力を支える条件になります。
出典:創造性の育成に関する研究|東京都教職員研修センター
友達とのやり取りが発想の材料を増やす
一人では思いつかない発想も、友達との意見交換をきっかけに生まれることがあります。同じ研究では、友達との相互作用と意見交換の機会が創造性を育てる条件の一つに挙げられています。ブロックや積み木を複数人で扱う場面では、それぞれの子どもが持つ発想が組み合わさり、一人遊びとは異なる形が生まれる場合があります。自分の発想が友達に受け入れられる経験は、次の発想を出す自信にもつながります。友達との関わりは、発想の材料を増やす機会だといえます。
発想力の発達段階に合わせた遊び方
発想力の育ち方には、年齢ごとに異なる特徴が見られます。ここでは、年齢に応じた遊びの特徴を4つの段階で整理します。
- 1〜3歳ごろは身近な物を別の物に見立てる時期
- 3〜4歳ごろは簡単なごっこ遊びを楽しむ時期
- 4〜5歳ごろはイメージを共有して遊ぶ時期
- 5〜6歳ごろは筋書きのある遊びを組み立てる時期
年齢ごとの遊びの特徴は、次の表のとおりです。
| 年齢のめやす | 遊びの特徴 | 玩具の例 |
|---|---|---|
| 1〜3歳ごろ | 身近な物を別の物に見立てる | 積み木、布製のおもちゃ |
| 3〜4歳ごろ | 簡単なごっこ遊びを楽しむ | ままごとセット、人形 |
| 4〜5歳ごろ | イメージを友達と共有する | 組み立て式のブロック |
| 5〜6歳ごろ | 筋書きのある遊びを組み立てる | 大型ブロック、工作キット |
1〜3歳ごろは身近な物を別の物に見立てる時期
保育所保育指針解説では、1歳以上3歳未満の時期にさまざまな素材や用具に親しみ、工夫して遊ぶ姿が示されています。この時期の子どもは、積み木を電話に見立てたり、布を毛布代わりに使ったりと、身近な物を別の物として扱い始めます。見立ての対象は単純ですが、目の前の物を別の意味で捉える力の芽生えといえます。この段階では、形が単純で扱いやすい玩具のほうが、見立て遊びのきっかけになりやすいと考えられます。
出典:保育所保育指針解説|こども家庭庁
3〜4歳ごろは簡単なごっこ遊びを楽しむ時期
3歳を過ぎると、見立てやごっこ遊びなどの象徴的な遊びがより発展した形で見られるようになります。お店屋さんごっこや家族ごっこのように、役割を決めて遊ぶ様子が増えるのもこの時期の特徴です。役割を演じるには、相手の立場を思い浮かべる力が必要になるため、発想力と同時に他者理解の力も育ちます。ごっこ遊びに必要な道具は、実物に近すぎない方が、子どもが自分で工夫する余地を残しやすくなります。
出典:保育所保育指針解説|こども家庭庁
4〜5歳ごろはイメージを共有して遊ぶ時期
4歳を過ぎると、頭の中のイメージを友達に言葉で伝え、遊びの内容をすり合わせる場面が増えます。一人で完結していた見立て遊びが、複数人で一つの物語を作る遊びへと広がっていく時期です。ブロックで作った町を友達に説明したり、相手のアイデアを取り入れて作り替えたりする様子も見られます。自分の案と友達の案を比べながら作り直す過程では、複数の発想を一つにまとめる力も養われます。イメージを共有する経験は、自分の考えを言葉にする練習の場にもなります。
5〜6歳ごろは筋書きのある遊びを組み立てる時期
幼児期の終わりに近づくと、遊びの中に始まりと終わりのある筋書きが現れます。豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うことが、この時期の育ちの目標として示されています。長い時間をかけて手の込んだ作品を作り上げたり、複数の場面をつなげた物語遊びを展開したりする姿も見られます。前日の続きから遊びを再開するなど、遊びを長期的に持続させる力もこの時期に育ちます。この段階では、時間をかけてじっくり取り組める玩具が、筋書きのある遊びを支えます。
出典:保育所保育指針解説|こども家庭庁
発想力を伸ばす知育玩具の選び方
玩具選びの視点によって、発想力の伸び方は変わります。ここでは、選ぶ際に確認したい4つのポイントをまとめます。
- 遊び方が一つに決まらない玩具を選ぶ
- 子どもの年齢や発達に合った難易度を選ぶ
- 素材や形が想像を刺激する玩具を選ぶ
- 子ども自身が選ぶ過程を大切にする
遊び方が一つに決まらない玩具を選ぶ
日本玩具協会の資料では、プレスクールの段階では創造意欲を刺激するような玩具を選ぶことが望ましいとされています。組み立て方や遊び方が一通りに決まっている玩具よりも、積み木や粘土のように使い方を子どもが決められる玩具の方が、発想力を刺激しやすくなります。遊び方の選択肢が多い玩具は、同じ玩具でも遊ぶたびに違う形や場面を生み出す余地を残します。玩具を選ぶ際は、説明書どおりの完成形があるかどうかを確認するとよいでしょう。
出典:こどもの成長とおもちゃ|一般社団法人日本玩具協会
子どもの年齢や発達に合った難易度を選ぶ
同じ資料では、発達段階に応じて玩具の役割が変わることが示されており、乳幼児期には感覚に訴える玩具、学童期には社会性を高める遊びが重要になるとされています。年齢に対して難しすぎる玩具は扱いに手間取り、発想を膨らませる前に集中力が切れてしまうことがあります。反対に簡単すぎる玩具では、工夫する余地が少なく発想力を使う機会が限られます。パッケージに記載された対象年齢は、選ぶ際の一つの目安として役立ちます。
出典:こどもの成長とおもちゃ|一般社団法人日本玩具協会
素材や形が想像を刺激する玩具を選ぶ
木や布のように質感が豊かな素材は、感触を確かめながら遊ぶ中で新しい発想を引き出します。単純な形の玩具ほど、子どもがその形に自分なりの意味を与えやすくなる点も特徴です。同じ玩具が場面ごとに違う役に見立てられるほど、遊びの展開も豊かになります。色や音が限定されすぎていない玩具は、子どもが場面ごとに違う役割を与える遊び方を後押しします。素材や形を確認するときは、実際に触れて質感を確かめることが判断の助けになるでしょう。
子ども自身が選ぶ過程を大切にする
日本玩具協会の資料では、子どもの選択を否定しないことが大切だと述べられています。大人が良いと考える玩具を一方的に与えるよりも、店頭やカタログで子ども自身に選ばせる過程を挟むと、その玩具への関心が高まりやすくなります。自分で選んだ玩具は、遊び方も自分なりに工夫しようとする意欲につながりやすいと考えられます。選ぶ過程そのものも、発想力を育てる機会として捉えるとよいでしょう。
出典:こどもの成長とおもちゃ|一般社団法人日本玩具協会
知育玩具で発想力を伸ばす実践方法
玩具の使い方によっても、発想力の育ち方は変わります。ここでは、家庭で取り入れやすい実践方法を4つに整理します。
- 完成形を決めずに遊びを始める
- 大人は正解を教えずに問いかける
- 表現したことを否定せず受け止める
- 遊びを振り返る時間を作る
完成形を決めずに遊びを始める
創造性を促す条件として、直接体験の充実と自由な探索活動が挙げられています。積み木やブロックで遊ぶ際に、あらかじめ何を作るかを決めてしまうと、子どもは手順どおりに組み立てるだけになりがちです。何を作るか決めずに手を動かし始めると、形を作る途中で新しい発想が生まれやすくなります。途中で予定を変えて別の形に作り替えることも、発想力を使う機会の一つです。大人が完成形の見本を示す場面を減らすと、発想の余地を残しやすくなります。
出典:創造性の育成に関する研究|東京都教職員研修センター
大人は正解を教えずに問いかける
子どもが作った物について、大人がすぐに正誤を判断すると、子どもは大人の反応をうかがって遊ぶようになりやすいといえます。「これは何かな」「次はどうなりそうかな」と問いかけると、子ども自身が言葉で考えを整理する機会になります。答えを教える代わりに問いかける関わり方は、子どもが自分で考える習慣を育てます。同じ問いかけでも、子どもによって返ってくる答えは異なり、その違い自体が発想の広がりを表します。問いかけの後は、子どもの答えを待つ時間を確保することも大切です。
表現したことを否定せず受け止める
幼稚園教育要領では、幼児の表現を受容し、表現しようとする意欲を受け止めることが指導上の留意点として示されています。子どもが作った形や説明した内容が大人の想定と違っていても、まずはその表現をそのまま受け止める姿勢が求められます。否定から入る関わりが続くと、子どもは間違いを恐れて新しい発想を試しにくくなります。受け止めたうえで感想を伝えると、子どもは次の発想も安心して表しやすいと考えられます。
出典:幼稚園教育要領|文部科学省
遊びを振り返る時間を作る
遊び終わった後に、作った物や遊んだ内容を子どもと一緒に振り返る時間を設けると、発想の過程が言葉として整理されます。「どうしてこの形にしたのか」を聞くことで、子どもは自分の発想を後から言語化する経験を積みます。写真を撮って残しておくと、後日見返しながら発想の変化を確かめられます。同じ玩具でも時期によって作る物や説明の仕方が変わる様子は、発想力の育ちを実感できる手がかりとなります。振り返りの時間は、次の遊びで新しい発想を試す意欲にもつながります。
まとめ
知育玩具は、遊び方の自由度と大人の関わり方によって、子どもの発想力を着実に伸ばします。今日の遊びから、完成形を決めずに素材に触れる時間を取り入れてみましょう。
