知育玩具を通じた遊びは、子どもが言葉でのやり取りや相手の気持ちを想像する経験を積み重ねる場になり、コミュニケーション能力を育てる助けになります。
本記事では、知育玩具でコミュニケーション能力が高まる理由、年齢に応じた遊びの特徴、玩具選びのポイント、効果的な実践方法、おすすめの知育玩具について紹介します。
コミュニケーション能力が将来の学習や社会性に与える影響
コミュニケーション能力は、就学後の学習や友人関係、更には将来の進路にまで関わる土台になります。ここでは、学習面・社会性・進路という三つの観点から、その影響を整理します。
- 小学校以降の学習面への影響
- 友人関係や集団生活における社会性への影響
- 進学や就職の場面で求められる力
小学校以降の学習面への影響
小学校の授業は、先生の説明を聞き、自分の考えを発表し、友達と話し合う場面で構成されています。人の話を最後まで聞く力や、自分の考えを言葉にまとめる力が育っていると、国語だけでなく算数や理科の授業でも、疑問点を質問したり、グループでの話し合いに参加したりしやすくなります。逆に、気持ちや考えを言葉にする経験が少ないと、分からないことを伝えられずに授業についていけなくなる場合もあります。就学前の家庭での対話や遊びを通じたやり取りは、こうした学習の土台作りにつながります。
友人関係や集団生活における社会性への影響
幼稚園や保育園、小学校での集団生活では、友達を遊びに誘う、順番を待つ、意見が食い違ったときに折り合いをつけるといった場面が日常的に生じます。自分の気持ちを言葉で伝え、相手の話を聞く力があると、こうした場面でのトラブルを減らし、友達関係を築きやすくなると考えられます。反対に、気持ちをうまく言葉にできないと、手が出たり、逆に自分の意見を飲み込んで我慢を重ねたりすることにつながる場合もあります。
進学や就職の場面で求められる力
コミュニケーション能力は、幼少期だけでなく、社会に出る段階まで一貫して重視される力です。日本経済団体連合会が2018年に実施した調査では、企業が新卒採用の選考にあたって特に重視する要素として「コミュニケーション能力」が16年連続で第1位となり、82.4%の企業が回答しています。この結果から、コミュニケーション能力は学齢期を超えて長く求められる力だと分かります。
参考:2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果|日本経済団体連合会
知育玩具でコミュニケーション能力が高まる理由・メカニズム
知育玩具がコミュニケーション能力を育てる背景には、遊びそのものが持つ学びの仕組みがあります。ここでは、その理由を四つの側面から整理します。
- 遊びを通じた学びのメカニズム
- 非認知能力との関係
- 言葉のやり取りが生まれる遊びの構造
- 対話のきっかけになる仕組み
遊びを通じた学びのメカニズム
文部科学省の中央教育審議会幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会の資料では、幼児期の学びについて「意欲に満ちた自発的で能動的に周りの物事や人に関わっていく活動を遊びという」と説明されています。知育玩具を使った遊びは、子どもが自分から手を伸ばし、工夫を重ねる活動であるため、その過程で自然と言葉が生まれやすくなります。遊びは、子どもにとって強制されたものではなく、自分から関わりたくなる活動である点が学びを支えています。
参考:中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会 第2回会議までの主な意見等の整理|文部科学省
非認知能力との関係
コミュニケーション能力は、意欲や協調性、自己制御といった、点数では測りにくい非認知能力の一部として位置づけられます。東京大学発達保育実践政策学センターが文部科学省の委託を受けて行った調査研究では、保育・幼児教育の現場における非認知能力の育成に向けた取り組みが整理されており、他者との関わりの中で育つ力として社会的な側面が挙げられています。知育玩具を介した遊びは、子どもが他者と関わりながら自分の気持ちを調整する経験を積む場になり、非認知能力全体の育ちにつながると考えられます。
参考:非認知能力に関する保育・幼児教育施設の意識や取り組みと園児への影響に関する調査研究|東京大学発達保育実践政策学センター
言葉のやり取りが生まれる遊びの構造
ごっこ遊びやすごろく、カードゲームなどの知育玩具は、遊ぶこと自体に役割やルールの説明、順番の確認といった言葉のやり取りが組み込まれています。例えば、お店屋さんごっこでは「いらっしゃいませ」「これをください」といったやり取りが自然に発生し、すごろくでは順番やルールを言葉で確認し合う場面が繰り返されます。こうした遊びの構造が、特別な指導をしなくても会話の機会を作り出す仕組みになっています。
対話のきっかけになる仕組み
知育玩具は、子ども同士だけでなく、親子の対話を生み出すきっかけにもなります。完成したブロック作品を見せながら説明したり、パズルのピースをどこに置くか相談したりする場面では、子どもが自分の考えを言葉にする経験を積み重ねられます。保護者が「どうやって作ったの」「次はどこに置く」と問いかけると、子どもは自分の考えを整理し、言葉にして伝える練習ができます。
参考:過去の調査研究|国立青少年教育振興機構
コミュニケーション能力の発達段階と年齢に応じた遊びの特徴
コミュニケーション能力の育ち方には、年齢に応じた段階があります。ここでは、未就学から小学校低学年までの四つの時期に分けて、遊びの特徴を整理します。
- 2〜3歳ごろの遊びの特徴
- 4〜5歳ごろの遊びの特徴
- 5〜6歳ごろの遊びの特徴
- 小学校低学年の遊びの特徴
2〜3歳ごろの遊びの特徴
発達心理学者パーテンが提唱した遊びの発達段階の考え方では、子どもの遊びは一人遊び、並行遊び、連合遊び、共同遊びの順に形を変えていくと整理されます。立命館大学の研究紀要では、並行遊びについて「他児のそばで同じような遊びを独立並行してする遊び」であり、ときどき会話はしても他児の動きには無関心な遊びだと解説しています。この時期の子どもは、友達のそばで同じ玩具を使って遊んでいても、直接的なやり取りはまだ少ない段階にあります。
参考:幼児の遊びの共有過程の探索的検討―プレイルームにおける砂遊び観察の可能性―|立命館大学人間科学研究
4〜5歳ごろの遊びの特徴
この時期になると、友達と共通の玩具を貸し借りしたり、簡単な役割を分担したりする連合遊びが増えていきます。前述の立命館大学の研究紀要では、遊びが更に進むと、共通の目標を持つ活動に複数の子どもが関わり、役割が当てられて分業が見られる共同遊びへと発展すると説明されています。ごっこ遊びの玩具や積み木は、この時期の子どもが役割を分担しながら一つの遊びを作り上げる経験を後押しする道具になります。
5〜6歳ごろの遊びの特徴
年長にあたるこの時期は、ルールのある遊びに関心を持ち始め、すごろくやカードゲームのように順番やルールを共有しながら進める遊びを好みます。幼稚園教育要領では、言葉の領域のねらいとして「人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう」ことが示されており、この時期の遊びはこのねらいと深く結び付いています。ルールを守りながら勝敗を受け止める経験も、この時期に少しずつ積み重なっていきます。
参考:幼稚園教育要領 第2章 ねらい及び内容|文部科学省
小学校低学年の遊びの特徴
小学校に入学すると、友達との関係は幼児期よりも複雑になり、複数人によるグループでの遊びや教室内でのやり取りが日常的になります。こども家庭庁が公表する保育所保育指針の解説では、3歳以上児の人間関係の領域について「他の人々と親しみ、相互に信頼感をもち、心情の表現と理解を図ること」がねらいとして示されており、この考え方は就学後の対人関係の土台としても重要です。ボードゲームやカードゲームのように、複数人で長い時間をかけて進める知育玩具は、この時期の複雑な人間関係の練習の場としても役立ちます。
参考:保育所保育指針解説|こども家庭庁
コミュニケーション能力を高めやすい知育玩具を選ぶ際のポイント
知育玩具を選ぶときは、年齢や遊び方だけでなく、コミュニケーションが生まれやすい仕掛けがあるかどうかを確認することが大切です。ここでは、選ぶ際に確認したい四つのポイントを整理します。
- 対象年齢と発達段階の一致
- 複数人で遊べる設計
- 会話やルール説明が生まれる仕掛け
- 安全性と長く使える汎用性
対象年齢と発達段階の一致
知育玩具のパッケージには対象年齢が表示されていますが、これは安全面と発達面の両方を踏まえて設定されています。一般社団法人日本玩具協会が運営するSTマークは、13歳までの子どもが遊ぶ玩具を対象に、機械的・物理的安全性、可燃安全性、化学的安全性の三つの基準で検査を行う制度です。**対象年齢の表示は、誤飲などの事故を防ぐ目的だけでなく、その年齢の子どもが理解しやすい遊び方に設計されているかどうかの目安にもなります。**購入前には、対象年齢が実際の子どもの発達段階と合っているかを確認しましょう。
参考:一般社団法人日本玩具協会|日本玩具協会
複数人で遊べる設計
コミュニケーション能力を育てる目的で玩具を選ぶ場合は、一人で完結する遊びよりも、複数人で関わりながら進める設計になっているものを選ぶと、やり取りの機会を増やしやすくなります。すごろくやカードゲーム、共同で組み立てるブロックのように、複数人が同じ目標に向かって関わる玩具は、順番を待つ、意見を出し合うといった経験を積む機会を生み出します。一人遊び用の玩具を否定するものではありませんが、家族や友達と一緒に遊べる玩具を選択肢に加えることをおすすめします。
会話やルール説明が生まれる仕掛け
玩具そのものに、ルールの説明や役割の確認といった言葉のやり取りが組み込まれているかどうかも、選ぶ際の目安になります。例えば、カードに書かれたお題について話す遊びや、順番にストーリーを作っていく遊びは、遊びながら自然と会話が生まれる仕掛けになっています。逆に、説明書を読むだけで完結し、遊び自体に会話の要素が少ない玩具は、コミュニケーション能力を育てる目的からするとやや遠い場合があります。
安全性と長く使える汎用性
知育玩具は、購入後も長く使えるかどうかを考えて選ぶと、繰り返し遊ぶ中でコミュニケーションの機会を積み重ねやすくなります。素材の耐久性や部品の紛失しにくさに加えて、遊び方を変えながら年齢が上がっても使い続けられる玩具は、家庭での投資としても無駄になりにくいといえます。購入時には、対象年齢の範囲だけでなく、遊び方の幅広さも確認しましょう。
知育玩具でコミュニケーション能力を高める効果的な実践方法
知育玩具を用意するだけでなく、遊び方や関わり方を工夫することで、コミュニケーション能力を育てる効果を高めやすくなります。ここでは、家庭で取り入れやすい四つの実践方法を整理します。
- 親子で一緒に遊ぶ時間を作る
- 気持ちを言葉にする声かけを心がける
- 友達やきょうだいと遊ぶ機会を作る
- 家庭でのルール作りを積み重ねる
親子で一緒に遊ぶ時間を作る
知育玩具を子ども一人に任せきりにするのではなく、保護者が一緒に遊ぶ時間を作ることで、対話の機会は大きく増えます。ブロックを組み立てながら「次は何を作る」と尋ねたり、すごろくの順番を待ちながら会話を挟んだりする時間は、子どもにとって言葉を使う練習の場になります。平日は時間の確保が難しい場合でも、夕食後の10分間や休日の午前中など、決まった時間を作ることで習慣として根付きます。
気持ちを言葉にする声かけを心がける
子どもが玩具で遊んでいるときに、保護者が「楽しかった」「悔しかった」といった気持ちを表す言葉を添えて話しかけると、子どもは自分の気持ちを言葉にする手がかりを得られます。すごろくで負けたときに「悔しかったね」と気持ちを代弁してから、次にどうしたいかを尋ねる関わり方は、子どもが自分の感情を言葉で表現する練習につながります。気持ちを言葉にする経験を繰り返すことは、対話の土台を作るうえで役立ちます。
友達やきょうだいと遊ぶ機会を作る
親子での遊びに加えて、友達やきょうだいなど同年代の子どもと一緒に遊ぶ機会を意識的に作ることも大切です。同年代の子ども同士のやり取りでは、大人相手とは異なり、譲り合いや意見のぶつかり合いが生じやすく、そうした経験を通じて折り合いのつけ方を学んでいきます。休日に友達を家に招いたり、児童館や公園で知育玩具を持ち寄って遊んだりする機会を作ると、家庭だけでは得にくい対人関係の経験を積み重ねられます。
家庭でのルール作りを積み重ねる
知育玩具で遊ぶ際に、順番を決める、片付けの分担を決めるといった簡単なルールを家庭内で作り、繰り返し実践することも効果的です。ルールを言葉で確認し合う過程そのものが、伝える力と聞く力を育てる練習になります。ルールを守れなかったときには、頭ごなしに叱るのではなく、何が難しかったのかを子ども自身の言葉で説明してもらう関わり方をおすすめします。
コミュニケーション能力が高まる知育玩具のおすすめ8選
ここまで紹介した選び方や実践方法を踏まえて、コミュニケーション能力を育てやすい知育玩具の種類を8つに整理します。
| 玩具の種類 | 主な対象年齢の目安 | 育ちやすい力 |
|---|---|---|
| ままごと・お店屋さんごっこセット | 2歳〜6歳ごろ | 役割を演じながらの言葉のやり取り |
| 人形やぬいぐるみを使った再現遊びの玩具 | 2歳〜6歳ごろ | 気持ちを想像して言葉にする力 |
| 気持ちを言葉にするカードゲーム | 4歳〜8歳ごろ | 感情を言葉で表現する力 |
| すごろく | 4歳〜8歳ごろ | 順番を守り会話をする力 |
| 協力して完成させる積み木・ブロック | 3歳〜8歳ごろ | 役割分担と相談する力 |
| 複数人で進めるパズル | 3歳〜8歳ごろ | 相談しながら進める力 |
| 表情を学ぶ絵本型の玩具 | 2歳〜6歳ごろ | 相手の表情を読み取る力 |
| ルール説明を伴うボードゲーム | 5歳〜8歳ごろ | ルールを言葉で伝え合う力 |
ままごと・お店屋さんごっこセット
ままごとやお店屋さんごっこの玩具は、役割を演じながら「いらっしゃいませ」「ください」といったやり取りを繰り返す遊びです。役になりきることで、普段は言いにくい言葉も声に出しやすくなり、言葉のキャッチボールの練習になります。友達や保護者を相手役に見立てて遊ぶことで、二人以上でのやり取りの経験も積み重ねられます。
人形やぬいぐるみを使った再現遊びの玩具
人形やぬいぐるみを使った再現遊びでは、子どもが日常の出来事を思い出しながら、登場人物のせりふを自分で考えて話します。この過程で、相手の立場に立って気持ちを想像する力が育ちやすくなります。保護者が別の人形を持って会話に加わると、子どもは想像した気持ちを言葉にして伝える練習を重ねられます。
気持ちを言葉にするカードゲーム
カードに描かれた表情やお題について話すカードゲームは、自分の気持ちや経験を言葉にする練習に向いています。「今日うれしかったこと」のようなお題をきっかけに、子どもは自分の内側にある気持ちを整理して話す経験を積めます。家族全員で順番に話す形にすると、聞く姿勢を育てる練習にもなります。
すごろく
すごろくは、順番を守る、ルールを確認する、結果を受け止めるといった一連の流れの中で、自然と会話が生まれる玩具です。マスに書かれたお題に沿って話す形式のすごろくを選ぶと、遊びながら気持ちや経験を話す機会を増やせます。負けたときの気持ちを言葉にする練習の場としても活用できます。
協力して完成させる積み木・ブロック
複数人で一つの作品を完成させる積み木やブロックは、役割を分担しながら相談する経験を積める玩具です。「ここは誰が作る」「次は何色を使う」といったやり取りが自然に発生し、意見が食い違ったときに折り合いをつける練習にもなります。完成した作品について説明し合う時間を作ると、伝える力の練習にもつながります。
複数人で進めるパズル
複数人で一つのパズルを完成させる遊びは、ピースの位置を相談しながら進める過程で、聞く力と伝える力の両方を使う場になります。年齢が近い友達やきょうだいと一緒に取り組むと、意見を出し合いながら一つの目標に向かう経験を積み重ねられます。完成したときの達成感を共有する体験も、対人関係を築くうえで役立ちます。
表情を学ぶ絵本型の玩具
表情のイラストやしかけを使って感情を学ぶ絵本型の玩具は、相手の表情から気持ちを読み取る力を育てる助けになります。「この顔はどんな気持ちだと思う」と保護者が問いかけながら遊ぶと、子どもは表情と感情の結び付きを少しずつ理解していきます。この力は、友達との遊びの中で相手の様子に気づくことにもつながります。
ルール説明を伴うボードゲーム
複数人で長い時間をかけて進めるボードゲームは、ルールを言葉で説明し合う場面が多く、小学校低学年の子どもにも取り組みやすい玩具です。新しいゲームを覚える際には、家族や友達に向けてルールを説明する経験ができ、順序立てて話す力の練習になります。勝敗を通じて感情を調整する経験も積み重ねられます。
まとめ
知育玩具を通じた遊びは、年齢に応じた特徴を踏まえて選び、親子や友達との対話を意識して関わることで、子どものコミュニケーション能力を育てる助けになります。まずは家庭にある知育玩具を一つ手に取り、今日の遊びの時間から気持ちを言葉にする声かけを試してみましょう。
