知育玩具を使った遊びは、子どもが自分の頭で考え、答えを見つけようとする力を育てる場になります。日々の遊びの中で試行錯誤を重ねる経験は、将来の学習や人との関わりに生きる問題解決能力の土台になると考えられます。
本記事では、知育玩具で問題解決能力が伸びる仕組み、年齢に応じた遊びの特徴、玩具を選ぶ際のポイント、家庭での関わり方、おすすめの知育玩具について紹介します。
知育玩具で問題解決能力が伸びる仕組み
ここでは、知育玩具の遊びがなぜ問題解決能力の育ちにつながるのかを、四つの側面からたどります。
- 試行錯誤の繰り返しが思考力を育てる仕組み
- 失敗が学びに変わる理由
- 実行機能とどう関わっているのか
- 大人の関わり方で結果が変わる理由
試行錯誤の繰り返しが思考力を育てる仕組み
知育玩具は、正解にたどり着くまでに何度もやり直せる構造を持っているものが多く、この繰り返しが思考力を育てます。文部科学省の資料では、幼児が「原因と結果について学ぶ方法は、試行錯誤、そして他の人や出来事を観察することによる」と説明されています。積み木が崩れる、パズルのピースがはまらないといった結果を目にして、次はどう置けばよいかを考える過程が、問題解決の基本的な流れを体験する機会になります。
参考:幼児教育の基本となる乳幼児の発達と遊びと学びの特徴|文部科学省(無藤隆・白梅学園大学)
失敗が学びに変わる理由
遊びの中での失敗は、テストの点数のように評価されるものではなく、次の工夫につなげやすい性質を持っています。うまくいかなかった原因を子ども自身が振り返る時間があると、同じ失敗を避けるための工夫を自分で考えるようになります。厚生労働省の保育所保育指針解説でも、保育の目標として「豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと」が掲げられており、遊びの中での気づきを大切にする方針が示されています。
参考:保育所保育指針解説|こども家庭庁(平成30年2月厚生労働省作成)
実行機能とどう関わっているのか
問題解決の過程では、目の前の行動を止めて考える力や、途中で計画を切り替える力といった実行機能と呼ばれる働きが使われます。実行機能は、衝動的にすぐ答えを出そうとする動きを一度抑え、別の方法を試す判断につながる働きです。知育玩具に取り組む時間は、こうした働きを繰り返し使う機会になり、年齢を重ねるにつれて少しずつ発達していくと考えられています。
大人の関わり方で結果が変わる理由
同じ知育玩具で遊んでいても、そばにいる大人の関わり方によって、子どもが得られる学びの深さは変わります。困っている様子を見てすぐに答えを教えると、子どもが自分で考える機会を奪ってしまう場合があります。一方で、見守りながら適切な問いかけを加えると、子どもは自分の力で工夫する経験を積み重ねていきます。
年齢によって遊び方はどう変わるのか
ここでは、年齢に応じた遊びの特徴を四つの区分でたどります。
- 2歳から3歳ごろの遊びの特徴
- 4歳から5歳ごろの遊びの特徴
- 小学校低学年ごろの遊びの特徴
- 年齢だけで判断しない考え方
2歳から3歳ごろの遊びの特徴
文部科学省の資料によると、0歳から1歳ごろは直感的で身体的な基盤をもとに動きますが、2歳から3歳ごろになると表象機能、つまり目の前にないものを頭の中で思い浮かべる力が発達し始めます。この時期の子どもは、形をはめ込むだけのシンプルなパズルや、積み上げてはくずす積み木遊びを通して、手を動かしながら結果を確かめる経験を重ねます。うまくいかないときに大人がすぐ手を貸すのではなく、少し待つ関わり方が向いている時期です。
参考:幼児教育の基本となる乳幼児の発達と遊びと学びの特徴|文部科学省(無藤隆・白梅学園大学)
4歳から5歳ごろの遊びの特徴
同じ資料では、非認知的な面のうち感情のコントロールが顕著に発達する時期として4歳から6歳が挙げられています。この時期の子どもは、ピース数の多いパズルや複数のルールがあるボードゲームなど、少し複雑な課題にも粘り強く取り組めるようになっていきます。うまくいかずに悔しさを感じても、気持ちを立て直して再挑戦する場面が増えるのもこの時期の特徴です。
参考:幼児教育の基本となる乳幼児の発達と遊びと学びの特徴|文部科学省(無藤隆・白梅学園大学)
小学校低学年ごろの遊びの特徴
小学校低学年になると、遊びの中で見通しを立ててから行動する場面が増えていきます。プログラミング的な思考を使う組み立て玩具や、複数の手順を踏んで完成させる工作キットなど、計画を立ててから実行するタイプの遊びに向いている時期です。友達と役割を分担しながら一つの目標に向かう遊びも取り入れやすくなります。
以下の表は、年齢の目安と遊びの特徴を簡単にまとめたものです。
| 年齢の目安 | 発達の特徴 | 向いている遊び方 |
|---|---|---|
| 2歳から3歳ごろ | 表象機能が発達し始める | 型はめ・積み上げ遊び |
| 4歳から6歳ごろ | 感情のコントロールが発達する | ピース数の多いパズル・簡単なルールのゲーム |
| 小学校低学年ごろ | 見通しを立てて行動できる | 計画的な組み立て・協力型の遊び |
年齢だけで判断しない考え方
年齢はあくまで目安であり、同じ年齢でも得意な遊びや興味の向く方向には差があります。年齢別の目安を参考にしつつ、実際に子どもが取り組んでいる様子を見て、難しすぎて手が止まっているのか、簡単すぎて飽きているのかを確認する姿勢が大切です。目の前の子どもの反応に合わせて玩具を調整することが、無理のない挑戦につながります。
知育玩具はどう選べばよいのか
ここでは、問題解決能力を育てる知育玩具を選ぶときに確認したいポイントを四つ確認します。
- 難易度が段階的に上がる玩具を選ぶ
- 答えが一つに決まらない玩具を選ぶ
- 子どもの興味に合わせて選ぶ
- 安全性と耐久性を確認する
難易度が段階的に上がる玩具を選ぶ
問題解決能力を育てる玩具を選ぶ際は、難易度が一段階ずつ上がっていく構造を持つものが向いています。ピース数を変えられるパズルや、ブロックの数を増やして作品を複雑にできる玩具は、成長に合わせて長く使い続けられる利点があります。最初から難しすぎる玩具を選ぶと、途中であきらめてしまう場面が増えやすくなるため注意が必要です。
答えが一つに決まらない玩具を選ぶ
積み木や自由に組み立てられるブロックのように、完成形が一つに決まらない玩具は、子どもが自分なりの方法を考える余地を残してくれます。決まった手順どおりに進めるだけの玩具に比べて、試行錯誤を重ねる回数が増えやすく、問題解決の経験を積みやすくなります。子どもが自分の作りたいものを思い描いて挑戦できる点も、この種の玩具の特徴です。
子どもの興味に合わせて選ぶ
どれほど教育的な玩具であっても、子どもが興味を持てなければ繰り返し取り組む動機にはつながりません。乗り物や動物、物語の世界観など、子どもが日ごろ関心を示しているテーマと結びついた玩具を選ぶと、遊びを続けるきっかけを作りやすくなります。買い与える前に、子どもと一緒に選ぶ時間を作ることも、興味を確かめる方法の一つです。
安全性と耐久性を確認する
問題解決の力を育てる工夫と合わせて、玩具そのものの安全性も確認しておく必要があります。日本国内で流通する玩具の多くには、業界団体が定める安全基準を満たした製品に付けられるSTマークが表示されており、購入時の目安になります。小さな部品が外れやすいものや、繰り返しの分解・組み立てに耐えられない素材は、長期間の使用には向きません。
参考:STマーク 玩具業界の自主規制による安全な玩具を表すマーク|政府広報オンライン
家庭でどう関わればよいのか
ここでは、知育玩具を通じて問題解決能力を伸ばすために家庭でできる関わり方を四つまとめます。
- すぐに答えを教えない関わり方
- 結果でなく過程を認める声かけ
- 集中できる時間と環境を用意する
- 親子で一緒に取り組む場面をつくる
すぐに答えを教えない関わり方
子どもがパズルやブロックで手が止まっているとき、正解をそのまま伝えるのではなく、気づきを引き出す問いかけを挟むと、自分で考える時間を確保できます。国立教育政策研究所の報告書でも、幼児教育の実践において「思考し探求するプロセスの援助」が保育の質の一要素として検討されています。答えを教える代わりに「次はどうなると思う」といった問いを投げかける関わり方が、この援助の考え方に近いものです。
参考:幼児期からの育ち・学びとプロセスの質に関する研究 報告書 第1巻|国立教育政策研究所幼児教育研究センター
結果でなく過程を認める声かけ
完成したかどうかだけでなく、途中でどんな工夫をしたかに注目して声をかけると、子どもは挑戦する過程そのものに価値を感じるようになります。うまくいかなかった場合でも、試した方法を認める言葉をかけると、次の挑戦への意欲につながります。結果に対する評価だけを繰り返すと、失敗を避けるために簡単な課題ばかりを選ぶ傾向が強まる可能性があります。
集中できる時間と環境を用意する
問題解決に取り組むには、途中で中断されずに考え続けられる時間と環境が必要です。テレビの音や他のきょうだいの声が常に入る場所では、集中力が途切れる原因になります。短い時間でも構わないので、決まった時間帯に一人で、あるいは大人と二人で取り組める環境を整えると、遊びに集中できる時間が生まれます。
親子で一緒に取り組む場面をつくる
すべての遊びを子ども一人に任せるのではなく、時には親子で同じ課題に取り組む場面を作ることも効果的です。大人が困っている様子を見せながら考える過程を口に出すと、子どもは問題に取り組むときの考え方そのものを観察して学ぶことができます。忙しい日常の中でも、週に一度など決まったタイミングを設けると続けやすくなります。
問題解決能力を伸ばす知育玩具6選
ここでは、これまでの内容を踏まえて、問題解決能力を育てやすい知育玩具を6種類取り上げます。
- 積み木
- ジグソーパズル
- ブロック玩具
- 迷路・ルートをたどる玩具
- 協力型のボードゲーム
- 組み立て工作キット
積み木
積み木は、完成形が決まっていない代表的な玩具で、崩れる・積み上がるという結果を目で確かめながら、次にどう置くかを考える経験を重ねられます。素材や大きさの異なる積み木を組み合わせると、バランスを取る工夫が必要になり、難易度を自然に調整できます。2歳ごろから遊び始められ、年齢が上がるにつれて複雑な構造物に挑戦できる点も利点です。
ジグソーパズル
ジグソーパズルは、ピースの形や絵柄の一部を手がかりに、全体の完成形を思い描きながら試行錯誤する玩具です。ピース数を子どもの発達に合わせて選ぶと、無理なく挑戦できる難易度に調整できます。うまくはまらないピースを別の場所に試す過程は、仮説を立てて確かめる思考のはたらきに近いものです。
ブロック玩具
ブロック玩具は、決まった正解がなく、子どもが自分の発想で作品を組み立てられる点が特徴です。設計図どおりに組み立てる遊び方と、自由に発想して作る遊び方の両方ができるため、目的に応じて使い分けられます。パーツが多いほど組み合わせの可能性が広がり、年齢が上がっても飽きずに続けやすい玩具です。
迷路・ルートをたどる玩具
玉を転がして迷路を進める玩具や、道順を考えて組み立てるルート型の玩具は、目的地までの手順を頭の中で組み立てる力を使います。うまく進まなかった場合に、どこで止まったかを振り返り、別のルートを試す過程が、問題解決の練習になります。立体的なコースを自分で組み替えられるタイプは、難易度の調整がしやすい特徴を持っています。
協力型のボードゲーム
参加者全員で協力しながら目標を目指すタイプのボードゲームは、一人で解けない課題にどう対応するかを考える機会になります。次にどう動けば全体がうまくいくかを話し合う過程は、相手の考えを聞きながら自分の考えを伝える経験を重ねられます。勝ち負けを競う遊びとは異なる視点で、問題解決に取り組める点が特徴です。
組み立て工作キット
複数の手順を踏んで一つの作品を仕上げる工作キットは、見通しを立ててから行動する力を使う玩具です。説明書どおりに進める中でうまくいかない箇所が出てきた場合、どの手順に戻ってやり直すかを考える経験ができます。完成後に自分で改造したり動かし方を工夫したりできるタイプは、更に発展的な取り組みにつながります。
まとめ
知育玩具を通じた試行錯誤の積み重ねは、子どもの問題解決能力を育て、将来の学習や人との関わりを支える土台になります。年齢に応じた玩具を選び、すぐに答えを教えない関わり方を家庭で意識してみましょう。
