STEAM教育は、科学・技術・工学・芸術・数学など、複数の分野を組み合わせて学ぶ教育の考え方です。学校の授業だけでなく、習い事や家庭での学びにも取り入れられています。
本記事では、STEAM教育の定義やSTEM教育との違い、なぜ注目されているのか、どのような力が育つのか、学校での導入事例、家庭でできる取り組み、教材・習い事の選び方、導入時の注意点まで紹介します。
STEAM教育の基本定義とSTEM教育との違い
まず、STEAM教育が何を意味するのかを確認しましょう。STEM教育との違いや、Artsが加わった背景、5つの領域がどのように学びにつながるのかをわかりやすく解説します。
STEAM教育の5つの領域
STEAM教育とは、科学・技術・工学・芸術・数学という5つの分野を組み合わせて学ぶ教育の手法です。
それぞれの教科を別々に学ぶのではなく、知識や考え方を横断的に組み合わせて使うことで、実社会の問題を見つけ、解決する力につなげることがねらいです。
科学(Science)は自然現象の理解や、観察・実験を通じた探究を指します。技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)は、それぞれ情報技術の活用や、ものづくりの設計からプロトタイプの作成までのプロセス、数値データや論理的な思考の適用を指します。これらの領域は個別に学ぶのではなく、教科の枠を超えて統合的に働かせる学習として位置づけられている点が特徴です。
STEAM教育という言葉だけでは内容がわかりにくい場合もあります。まず5つの領域が何を表しているのかを知ることが、理解への第一歩です。
STEM教育とAが加わった背景
STEM教育にArts(A)が加わることで、技術や科学に目的や価値を与える学習へと発展してきました。
単に理数系の人材を育成することにとどまらず、新しい価値を生み出す力や、複雑化する社会課題に対応できる市民を育てることが必要とされるようになったためです。
アメリカでは「STEM Education Act of 2015」から「STEM to STEAM Act of 2017」へと法律が改定される中で、芸術やデザインの概念が統合されてきました。数学や理科が主導していたSTEM教育に、創造性やイノベーションの促進を目的としたAが導入されたこと、そしてSTEM教育には理数系の進路を歩む特定の人材を育てる側面と、すべての市民のリテラシーを向上させる側面という2つの目的があったことが、この展開の背景です。
STEM教育との違いや、Aが加わった歴史的な背景を知ることで、STEAM教育への理解が深まります。
A(リベラルアーツ)の役割
STEAM教育におけるAの範囲は、単なる芸術やデザインにとどまらず、人文科学や社会科学を含む広い意味でのリベラルアーツ(人間の自由な知性を育てるための幅広い教養科目群)を指しています。
科学技術をどのような目的で社会や生活に生かすべきかという価値観や倫理観、感性を育むことが理由です。
文部科学省の審議では、Aの範囲は芸術や文化、生活、経済、法律、政治、倫理などを含めた広い意味でのリベラルアーツと定義されています。また、Aは他の4つの領域と同格・同次元のものではなく、それらの技術に目的や社会的な意義を与える存在として解釈されていること、既存の学問領域を中心とした学びに、課題解決型の要素を加えるカリキュラムの構成原理が採用されていることも、具体的な特徴です。
Artsが意味する具体的な範囲や役割について疑問を持っている場合、こうした位置づけを知ることで解消しやすくなります。
参考:STEAM≠STEM+A:高等教育におけるSTEAM教育はいかにあるべきか|CiNii Research
STEAM教育が推進される背景
AIやデジタル技術の急速な発展に伴い、なぜ今日本や世界でSTEAM教育が強く推進されているのか、その社会的背景を解説します。
先端技術の発展とSociety 5.0
人工知能やIoTといった先端技術が広く浸透するSociety 5.0(仮想空間と現実空間を高度に融合させた社会を指す言葉)の時代において、教育のあり方が根本から変化しています。
高度な技術が社会生活に取り入れられることで、従来の知識を詰め込む学習だけでは対応できない、非連続な変化が生じていることが理由です。
人工知能やビッグデータ、モノのインターネットと呼ばれるIoT、ロボティクスといった先端技術が急速に高度化していること、学校現場ではGIGAスクール構想(1人1台の学習用端末と高速通信ネットワークを整備する国の施策)によって早期からICT環境が整えられていること、そして社会構造の変化に伴い、文系・理系の枠を超えて情報を統合し活用する能力が求められるようになったことが、具体的な内容です。
時代背景を踏まえてSTEAM教育の必要性を考えることは、子どもの将来を見据えるうえで役立ちます。
文部科学省の教育方針の転換
文部科学省は、学習指導要領において、教科等横断的な視点による資質・能力の育成を重視する方針を打ち出しています。
各教科で得た知識や技能を統合し、実社会における問題の発見や解決、社会的な価値の創造に結びつけることが理由です。
平成31年(2019年)4月17日に文部科学大臣が「新しい時代の初等中等教育の在り方」を諮問し、その中でSTEAM教育の推進が提言されたこと、教育再生実行会議の第11次提言でプログラミング教育やデータサイエンス教育、STEAM教育が推奨されたこと、そして「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させることで資質・能力を育成する方針が示されていることが、具体的な内容です。
国の教育方針や学習指導要領の中での位置づけを知ることで、STEAM教育に対する理解がより正確になります。
予測困難な社会で市民を育てる必要性
STEAM教育は、専門人材の育成だけでなく、現代社会を生きるすべての市民に必要なリテラシーの育成も目指しています。
複雑化する社会課題に対して、科学技術のメリットとデメリットの両方を理解し、適切な判断を下せる市民が必要とされていることが理由です。
専門人材の育成(for excellence)と、現代社会を生きる市民の育成(for all)という2つの目的が成立していること、誤った情報や偽の情報が広がりやすい社会において科学的な教育やリスクへの理解が必要とされていること、そしてイギリスやアメリカなどの国々では、経済成長のための専門人材の確保と、市民全体の科学的リテラシーの向上を両立させる施策が取られていることが、具体的な内容です。
我が子や児童生徒が将来どのような力を求められているのかを考える際、こうした背景を知ることが手がかりになります。
STEAM教育で育つ力
STEAM教育を受けることで子どもたちに身につく具体的に有用なスキルや、学習効果・メリットについて詳しく説明します。
論理的思考力と言語能力
観察や実験、データ分析を通じて、物事を筋道立てて考え、主張をまとめる論理的思考力と言語能力が育まれます。
課題を分析し、レポートや論文、プレゼンテーションといった形式で、根拠に基づいて主張を整理していく過程を経ることが理由です。
プログラミング的思考や情報モラルを含む情報活用能力が育成されること、小学校から大学までを通じた統計教育やデータ活用の学習の中で統計的な推論力が身につくこと、そしてレポートや論文、プレゼンテーションといった形式を通じて論理的な主張を組み立てる過程を経験することが、具体的な内容です。
論理的思考力や言語能力がどのような学習の過程で身につくのかを知ることは、家庭や学校での関わり方を考える手がかりになります。
創造性の向上
感性やデザイン思考を働かせることで、これまでにない新しい価値やアイデアを生み出す創造性が高まります。
芸術的な感性であるAを取り入れることで、実社会の課題に対して自由な発想で解決策を模索することが理由です。
芸術的な感性を生かした心豊かな生活や社会的な価値の創出が意識されていること、プロトタイプの作成や試行錯誤を通じてデザイン思考やイノベーションを生み出す力が身につくこと、そして実際に手を動かしてものをつくる体験を通じて、独自の解決策や成果物を形にする過程を経験することが、具体的な内容です。
創造性という抽象的な言葉が、具体的な成果物をつくる過程から育まれるものであることを知ることで、STEAM教育への理解が深まります。
問題発見能力と課題解決能力
既に用意された問いに答えるだけでなく、自ら実社会の文脈から問いを立てて解決へと導く力が養われます。
実生活や実社会にある複雑な文脈の中に存在する課題に対して、複数の教科の知識を統合してアプローチすることが理由です。
実生活や実社会の文脈の中で問題を発見し、探究していく過程が展開されること、課題の設定から仮説の検証、実験、評価という一連の探究のプロセスを経験すること、そして高校の「総合的な探究の時間」や「理数探究」といった科目の中で、教科横断的な課題の解決に取り組む実践が行われていることが、具体的な内容です。
従来の受け身な学習との違いである、自発的な問題発見と解決という点にメリットを感じる場合、この内容が参考になります。
協働性と学習意欲
多様な他者と協力して成果を出す協働性や、学習に対する主体的な意欲、情意面の発達が促されます。
個人の興味や関心に基づいたテーマ設定と、チームでのプロジェクトの遂行を通じて、社会的・情動的なスキルが鍛えられることが理由です。
「個別最適な学び」と「協働的な学び」を行き来することで、他者を尊重し協力し合う関係性が築かれること、中学生を対象とした3,000名以上の生徒と40名の教員による大規模な調査で科学や技術への意識やジェンダーによる違いが分析されていること、そして高校生向けの課題研究プログラムにおいて、探究力や協働性など5つの力についての自己評価スコアが受講前後で上昇した事例が示されていることが、具体的な内容です。
協働力や学習意欲といった、テストの点数では測りにくい力への効果を知ることは、保護者にとって安心材料になります。
参考:高校生を対象としたSTEAM型課題研究プログラムにおける評価方法の開発と検証|J-Stage
学校や外部機関での導入事例
小学校から高校までの教育現場や、大学・企業が連携して実施している具体的なSTEAM教育の導入実践事例を紹介します。
小学校のプログラミングとカリキュラムマネジメント
小学校では、プログラミング学習や、教科横断的なカリキュラムマネジメント(教育課程を教科の枠を超えて編成し運用する取り組み)を中心としたSTEAM教育の実践が行われています。
発達段階に応じて、ものづくりや科学的な体験を基盤にしながら、各教科の学びを総合的に深めていくことが理由です。
新しい学習指導要領に基づくプログラミング教育やICT教育が全校的に導入されていること、教科横断的な教育課程編成による授業設計が実践されていること、そしてプログラミング学習を活用して理科や算数の概念理解や課題解決に取り組む授業が行われていることが、具体的な内容です。
事例としては、次のようなものが挙げられます。
大学と連携したカリキュラム研究
教育系の大学などが小学校と連携し、プログラミング学習とカリキュラムマネジメントを組み合わせた実践研究が行われています。
ICT活用の全校的な実践
義務教育学校などにおいて、先進的なICT活用を全教職員で取り組む実践事例があります。
小中連携による学年経営
チーム学年経営や教科担任制を活用しながら、小学校と中学校が連携してSTEAM教育に取り組む事例が見られます。小学校で実際に行われている授業の具体的なイメージを持つことで、STEAM教育への理解がより深まります。
参考:小学校におけるSTEAM教育のカリキュラムマネジメントと実践|CiNii Research
中高生の探究学習と課題研究
中学校・高校の段階では、「総合的な探究の時間」や「理数探究」を中心に、本格的なSTEAM型の課題研究が展開されています。
実社会の文脈に密接に関わるテーマを設定し、生徒自らが専門的な知識を統合して解を探っていく過程を重視することが理由です。
高等学校の新しい科目である「理数探究基礎」や「理数探究」、そして「総合的な探究の時間」でSTEAM的なアプローチが取り入れられていること、スーパーサイエンスハイスクール事業(先進的な理数教育に取り組む高校を文部科学省が指定する事業)で蓄積された研究開発の成果が活用されていること、そして大学が実施する高校生向けの課題研究プログラムにおいて、評価の指標となるルーブリックや自己評価の手法が実証されていることが、具体的な内容です。
事例としては、次のようなものが挙げられます。
大学主催の課題研究プログラム
大学が高校生を対象に実施する課題研究プログラムでは、生徒が自らテーマを設定し、専門家の助言を受けながら研究を進めます。
スーパーサイエンスハイスクールの取り組み
指定を受けた高校では、地域や社会が抱える課題の解決を目指すプロジェクト型の学習が行われています。
中高生向けの研究育成プログラム
大学が主催する研究者育成のためのプログラムを通じて、中高生が次世代の科学技術に触れる機会が用意されています。中高生の段階で行われている探究学習や課題研究の内容を具体的に知ることは、進路を考えるうえでも参考になります。
参考:高校生を対象としたSTEAM型課題研究プログラムにおける評価方法の開発と検証|J-Stage
大学・企業・研究機関による支援
学校だけでなく、大学や民間企業、研究機関が中心となって、質の高いSTEAM教材や研修を教育現場に提供する取り組みが進んでいます。
現場の教員の負担を軽減しながら、最先端の科学技術や実践的なノウハウを教育現場に還元することが理由です。
大学の研究所と企業が連携して技術科向けの教材を共同開発し、全国の多くの学校で導入されている例があること、大学の研究機関が動画コンテンツや出張授業を通じて全国各地でSTEAM教育の普及活動を行っている例があること、そして大学が身近な教材をSTEM教育向けに再構成し、研究成果を積極的に発信している例があることが、具体的な内容です。
教育機関や企業がどのように連携して支援を行っているのか、その全体像を知ることは、家庭や学校で活用できるリソースを探すうえで役立ちます。
家庭や地域での実践方法
特別なスクールに通うだけでなく、家庭での日常的な遊びや地域の環境を活用してSTEAM教育を取り入れる方法を解説します。
幼児期からのものづくりと科学体験
家庭での手先を使った工作や自然との触れ合いなど、身近なものづくりや科学的な体験が、STEAM学習の土台になります。
幼児期や児童期における手触りのある物理的な体験が、将来の科学的・技術的な概念の理解を支えることが理由です。
文部科学省の審議でも、幼児期からのものづくり体験や科学的体験の充実が、STEAM教育の土台として位置づけられていること、日常の工作や、水や風の動きといった身近な自然現象を観察したり触れたりする体験が挙げられること、そして身近な道具を科学の視点から捉え直す教材や、木材などの素材を活用した横断的な学びの工夫が広がっていることが、具体的な内容です。
家庭で今すぐ始められる素朴な体験学習の価値を知ることは、無理のない実践につながります。
知育アプリやブロック教材でのプログラミング体験
デジタルアプリやブロック型の知育玩具を活用することで、家庭の中で楽しみながら試行錯誤できる環境をつくることができます。
視覚的・直感的に操作できる道具を使うことで、失敗を恐れずに何度も条件を変えて試す態度が身につくことが理由です。
ブロック型の教材を活用したプログラミング教材によって、組み立てと検証を繰り返す学びができること、人工知能を活用した個別最適な学習アプリやデータサイエンス系のツールが家庭や学校で使われるようになっていること、そしてコンピュータ上で動かすソフトウエアと、物理的に組み立てるブロックや工作を組み合わせた統合的な学び方があることが、具体的な内容です。
家庭用のアプリやブロック玩具にはさまざまな選択肢があるため、こうした具体例を知ることが選ぶ際の参考になります。
日常の疑問を深める対話と学外イベント
親子の日常的な対話の中で「なぜ」を掘り下げたり、科学館や大学が開くイベントに参加したりすることも効果的な方法です。
大人がすぐに正解を教えるのではなく、子どもと一緒に考えたり本物に触れたりすることで、探究心が刺激されることが理由です。
「なぜだろう」という子どもの問いに対して、思考の過程を一緒に共有する親子の対話が挙げられること、科学系の博物館や大学が開催するワークショップ、出張授業といった、学校以外での科学体験の機会があること、そして科学技術振興機構が実施する研究者育成プログラムや、地域のイベントを通じて実際の研究者や企業と接する機会があることが、具体的な内容です。
家庭での問いかけ方や、学外イベントの活用方法を知ることで、日常生活の中でのSTEAM教育の実践がしやすくなります。
教材や習い事の選び方
民間スクール(プログラミング教室・ロボット教室など)や教材を選ぶ際に確認すべき重要なポイントを解説します。
子どもの発達段階と興味・関心への適合性
子どもの年齢や発達段階、そして本人の強い興味や関心に合った教材や教室を選ぶことが、最も優先すべき基準です。
子どもの実態から離れた高度すぎる内容や、興味のない分野を無理に強いてしまうと、学ぶ動機づけが阻害されてしまうことが理由です。
幼児期、小学校低学年、高学年、中高生といった発達段階に応じて難易度が設定されていること、科学技術に偏らず、デザインや自然、データといった子どもの多様な関心に対応したプログラムが用意されていること、そして子ども自身が主体的にテーマや探究の方法を選択できる自由度が確保されていることが、具体的な確認事項です。
子どもに合った教室や教材を選ぶ際の最初の基準として、こうした適合性の確認が役立ちます。
試行錯誤とプロセスを重視する環境
指導者がすぐに正解を教えるのではなく、子ども自身が自発的に試行錯誤できる環境を選ぶことが望ましいといえます。
STEAM教育の本質は、完成した作品の出来栄えではなく、試行錯誤を重ねる過程で育まれる資質や能力にあることが理由です。
海外の先進的な事例では、作品そのものよりも制作や思考の過程を重視する評価の姿勢が見られること、失敗を恐れずにプロトタイプの作成や再設計を繰り返す指導スタイルが取られていること、そして一方的な知識の詰め込みではなく、受講する子ども自身が課題を見つけて解決していくプロジェクト型の学習が採用されていることが、具体的な確認事項です。
教室の指導方針や授業のスタイルを見極める際には、こうした視点を持つことが役立ちます。
継続しやすい受講形式と指導体制
通学やオンラインといった受講の形式や費用感、指導者の専門性や伴走の姿勢を含めて、継続できるかどうかを確認することが大切です。
STEAM教育によって育まれる資質や能力は一朝一夕に身につくものではなく、中長期的な関わりが必要になることが理由です。
対面でのワークショップやロボット教室といった通学型と、動画ライブラリーやアプリを活用するオンライン型のどちらの受講形式が合っているかを検討すること、専門的な知識を持つメンターや講師による伴走とフィードバックの体制が整っているかを確認すること、そして教材費や受講料を継続して支払えるか、地域や学校のサポート体制と連携できるかを確認することが、具体的な内容です。
以下の表は、習い事や教材を選ぶ際に確認しておきたい主なポイントを整理したものです。
| 確認項目 チェックポイント | |
| 適合性 | 子どもの発達段階や興味・関心に合っているか |
| 指導スタイル | 正解を急がず試行錯誤の過程を大切にしているか |
| 受講形式 | 通学型・オンライン型のどちらが生活に合うか |
| 指導体制 | 専門性のある講師やメンターの伴走があるか |
| 継続性 | 費用や地域・学校との連携を含めて続けられるか |
継続して学ばせるための実用的な選定ポイントを整理しておくことで、教室選びに迷いにくくなります。
STEAM教育の導入時の注意点
STEAM教育を家庭や学校で取り入れる際に陥りがちな失敗や、注意すべきポイントを詳しく解説します。
知識の詰め込みやツールの目的化を防ぐ
最新のIT機器やキットをそろえること自体を目的にせず、何のために学ぶのかという本来のねらいを見失わないことが大切です。
道具や教材を導入しただけで満足してしまうと、見た目の良い表面的な体験で終わってしまい、深い学びにつながらないことが理由です。
諸外国の懸念事例として、見た目が良いだけの表面的なプロジェクトになってしまうことが指摘されていること、端末やアプリの操作を覚えるだけでなく、それらを使ってどのような課題を解決するのかという目的意識を持ち続けることが求められていること、そして各教科の基礎的な知識や技能の習得と、それらを横断しながら探究するプロセスの両立が必要とされていることが、具体的な内容です。
ツールへの依存や目的の手段化を防ぐためには、こうした視点を意識しておくことが役立ちます。
大人の過度な介入や正解提示を避ける
指導者や保護者が先回りしてアドバイスをしたり、唯一の正解を与えすぎたりしないよう配慮することが必要です。
大人が正解を示してしまうと、子どもが自ら問いを立て、失敗から学ぶという試行錯誤の機会が奪われてしまうことが理由です。
生徒が主導する探究と、教師や保護者による適切なサポートのバランスを段階的に調整する工夫が取られていること、試行錯誤の過程で生じた疑問や失敗の記録をポートフォリオや自己評価の形で残し評価する姿勢があること、そして思考の過程において子ども自身の問いや主体的な選択を尊重する働きかけが行われていることが、具体的な内容です。
保護者や指導者としての適切な関わり方を考える際には、サポートを引き算していく発想が参考になります。
特定人材への偏りと機会格差を防ぐ
科学技術分野で優れた才能を持つ子どもだけを対象とした偏った推進は避け、すべての児童生徒に配慮した学びを提供することが求められます。
特定の分野の才能開発だけに着目すると、学習に困難を抱える子どもや、環境の異なる学校・家庭の間で教育格差が広がるおそれがあることが理由です。
文部科学省の審議でも、科学技術分野に特化した人材育成のみに着目した場合、学校間の格差が拡大することへの懸念が示されていること、学習に課題を抱える子どもにこそ、教科横断的で実社会の文脈を伴う学習が意欲の向上につながるという指摘があること、そして理系・文系の枠にとらわれず、性別や背景に関わらず誰も取り残さない推進体制が意識されていることが、具体的な内容です。
教育格差や理系への偏りに対する不安を感じている場合、STEAM教育がすべての子どもを対象とした考え方であることを知ることが安心材料になります。
まとめ
STEAM教育は、科学・技術・工学・芸術・数学という5つの領域を統合しながら、実社会の課題を発見し解決する力を育む教育の考え方です。教科の足し算ではなく、各領域を結びつけることで、論理的思考力や創造性、問題発見・解決能力、協働性といった総合的な資質や能力を育てることがねらいとされています。専門人材の育成だけでなく、変化の激しい社会を生きるすべての市民に必要な力を育てるという二つの目的を持っている点も、押さえておきたいポイントです。
家庭では、幼児期のものづくり体験や親子の対話といった身近なところから始めることができます。教材や習い事を選ぶ際には、子どもの発達段階との適合性や、正解を急がない指導スタイルを確認しながら、無理のない範囲で試行錯誤を楽しめる環境を整えていくことが大切です。


