絵本が散らかるリビングは、空間のちょっとした工夫で片付けやすい状態に変えられます。子どもが自分から絵本を戻したくなる仕掛けを取り入れることで、片付けに追われる毎日の負担を軽くしていくことが可能です。
本記事では、絵本が散らかりやすくなるリビングの環境特徴、子どもが絵本に集中しじっくり楽しむための空間構成、自発的な片付けを促すアフォーダンスの活用方法、親子の信頼関係を深める絵本を通した関わり方、家庭での読書環境を充実させる工夫と支援について紹介します。
絵本が散らかりやすくなるリビングの環境特徴
子どもが絵本を次々と引っ張り出して広げてしまう背景には、リビングの空間や本棚の配置が関係していると考えられます。その物的環境の特徴を5つの観点から整理します。
- 単一の広い空間による注意散漫
- 他者の動線による注意力の分散
- 周囲の騒音による落ち着きのない状態
- サイズや厚みの異なる絵本の形状
- 絵本棚から椅子までの物理的な距離
単一の広い空間による注意散漫
仕切りのない広い部屋は子どもの注意が分散しやすく、絵本やおもちゃをあちこちに広げて歩き回る行動につながりやすくなります。畳一面が敷かれたような仕切りのない単一空間では、中央におもちゃなどを置いても、子どもが部屋中を無目的に歩き回ったり周囲を見回したりする様子がみられるとされています。
リビング全体が一つの広い空間になっていることが、絵本を床一面に散らかして歩き回る原因の一つと考えられます。
参考:乳児保育室の空間構成と“子どもの行為及び保育者の意識”の変容|保育学研究
他者の動線による注意力の分散
通路や他の部屋から家族の様子が見えすぎる環境は、子どもの遊びへの没頭を妨げる一因になります。廊下や隣の部屋に対して仕切りが低く、オープンな状態になっている部屋では、他者の動きが見えやすく、子どもの遊びの集中が途切れやすいことが指摘されています。
リビングを行き交う家族の動きが子どもの意識をそらし、絵本の出しっぱなしにつながっている可能性があります。
参考:乳児保育室の空間構成と“子どもの行為及び保育者の意識”の変容|保育学研究
周囲の騒音による落ち着きのない状態
周囲から聞こえてくる生活音や音楽は、子どもの遊びへの集中を妨げ、落ち着きを失わせる要因となります。保育室内の騒音が70デシベルから80デシベルを超えることも珍しくなく、音環境が子どもの行動に影響を及ぼす様子が確認されています。
テレビの音や生活騒音が、子どもが絵本をじっくり読めずに次々と引っ張り出す原因になっている可能性があります。
参考:乳児保育室の空間構成と“子どもの行為及び保育者の意識”の変容|保育学研究
サイズや厚みの異なる絵本の形状
多種多様な絵本のサイズや厚みは、本棚の中でバランスを崩しやすく、雪崩を起こして散乱する原因になります。乳幼児用の絵本はオノマトペや言葉の繰り返しを楽しむ厚みのあるものから形や色の異なるものまで多岐にわたり、一般的な本棚では収納しにくい特徴があるとされています。
絵本の物理的な形状の違いが収納のしづらさを生み、床に散らばりやすい理由の一つになっていると考えられます。
絵本棚から椅子までの物理的な距離
絵本棚と座る場所が離れていたり死角にあったりすると、本を取り出すだけでその場に放置されやすくなります。絵本棚が死角に配置され、椅子が離れている部屋では、子どもがその場で絵本をじっくり見る活動に集中しにくく、部屋の中央に滞留しやすいことが明らかになっています。
本棚と椅子の位置関係が、子どもの移動動線と片付けやすさに直結していることが分かります。
参考:幼稚園における学年進行に伴う環境の構成の変容に関する調査研究(PDF)
子どもが絵本に集中しじっくり楽しむための空間構成
リビングを仕切り、絵本に没頭できるコーナーを作ることで、子どもの遊び方に変化が期待できます。効果的な空間の仕切り方を5つ解説します。
- 低い仕切りを用いた静的遊びの空間
- カーペットを敷いたスペースの明確化
- 動的遊びと静的遊びのエリア分け
- 視界に入りやすい絵本棚の配置
- じっくり集中して見られる椅子の配置
低い仕切りを用いた静的遊びの空間
高さの低い仕切りを設けて静かに遊ぶスペースを独立させることで、絵本にじっくり向き合う時間が増えると考えられます。高さ60センチメートルほどの仕切りを配置して静的遊びの空間を作った事例では、絵本での遊び時間が平均55秒から430秒に増加したことが確認されています。
リビングの一角に簡易的な仕切りを置くだけでも、絵本を周囲に散らかさずに読書に没頭できる空間を作れる可能性があります。
参考:乳児保育室の空間構成と“子どもの行為及び保育者の意識”の変容|保育学研究
カーペットを敷いたスペースの明確化
床にカーペットやマットを敷くだけで空間の境界がはっきりし、子どもはその範囲内で落ち着いて遊びやすくなります。床の上に色の異なるカーペットや布を敷くことで、絵本のコーナーが識別されやすくなり、そこを拠点とした遊びが促されるとされています。
高価な家具を購入しなくても、ラグやカーペットを敷くだけで絵本を広げる場所を効果的に区切れます。
参考:乳児保育室の空間構成と“子どもの行為及び保育者の意識”の変容|保育学研究
動的遊びと静的遊びのエリア分け
体を動かすエリアと静かに過ごすエリアを分けることで、子どもの遊び全体の活動割合が向上する可能性があります。動的遊びの空間と、絵本などの静的遊びの空間を区分けした結果、部屋を歩き回るだけの時間が減り、実際に遊んでいる活動の割合が高くなることが分かっています。
リビングの中で動と静のエリアを分ける家具レイアウトは、具体的な設計の指針として応用しやすいと考えられます。
参考:乳児保育室の空間構成と“子どもの行為及び保育者の意識”の変容|保育学研究
視界に入りやすい絵本棚の配置
絵本棚が生活の動線上で自然と目に入る位置にあると、子どもは主体的に本を選ぶようになりやすいです。絵本棚が椅子のすぐ後ろや視界に入りやすい位置にレイアウトされている部屋では、子どもが自発的に絵本を選んで座る行動がみられるとされています。
絵本をどこにでも散らかすのではなく、本棚の近くで自発的に手に取らせる配置の重要性がうかがえます。
参考:幼稚園における学年進行に伴う環境の構成の変容に関する調査研究(PDF)
じっくり集中して見られる椅子の配置
本棚の近くに座りやすい椅子やローテーブルを配置することが、絵本をその場でじっくり読む習慣づくりに役立ちます。絵本棚を囲むように椅子を配置したり座りやすいローテーブルを置いたりする環境では、子どもが落ち着いて過ごしやすく、活動を継続しやすいことが示されています。
リビングに子ども用の椅子を設けることで、絵本を別の場所へ持ち出さずに読ませる仕組みを作りやすくなります。
参考:幼稚園における学年進行に伴う環境の構成の変容に関する調査研究(PDF)
自発的な片付けを促すアフォーダンスの活用方法
子どもの行動を自然と片付けに向かわせる仕掛けを理解しておくと、片付けの負担軽減につながります。収納環境を整える工夫を5つ取り上げます。
- おもちゃ棚に貼る絵のラベルの工夫
- 子どもが自分で扱える収納棚の高さ
- ゴザを敷いた明確な境界線の設置
- スズランテープによる水の流れの見立て
- 身近な場所への収納の配置
おもちゃ棚に貼る絵のラベルの工夫
収納場所にイラストや文字などの手がかりを示すことで、子どもが自分で絵本を戻す行為を促しやすくなります。家具や収納棚に絵や名前のラベルを貼って自分で扱えるよう工夫することは、子どもの自発的な生活習慣を育む物的環境の工夫として位置づけられています。
絵本の表紙のコピーやマークを棚に貼っておくことで、子どもが自発的に元の位置へ片付けられるようになりやすいと考えられます。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
子どもが自分で扱える収納棚の高さ
子どもの身長や目線に合わせた低い本棚を選ぶことで、絵本の取り出しと片付けが容易になります。子どもが自発的に遊びを選択できるようにするためには、自分で扱える、すぐに届く場所に遊具や教材が配置されていることが重要とされています。
子どもの手の届く高さの家具を選ぶことが、親の片付け作業を減らす土台になると考えられます。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
ゴザを敷いた明確な境界線の設置
床にゴザを敷いて明確なエリアを作ることで、そこが自分たちの活動スペースであり、片付ける場所であると認識しやすくなります。床にゴザを敷くことで周囲からも遊んでいる場であることが認識されやすくなり、空間のまとまりを意識して活動しやすくなる効果が確認されています。
ゴザやラグで境界線を作ることで、絵本をリビング全体に散らかさず、その枠内で片付ける意識を育てやすくなります。
参考:幼稚園における学年進行に伴う環境の構成の変容に関する調査研究(PDF)
スズランテープによる水の流れの見立て
子どもの想像力をかき立てる素材を少し配置することで、日常的な動作や片付けを遊びに変えられる可能性があります。キッチンの蛇口に青いスズランテープを取り付けて水の流れを見立てるような仕掛けは、子どもの日常の動作を自然と遊びに導く環境からの刺激として機能するとされています。
本棚に絵本の「おうち」のような見立ての仕掛けを施すことで、子どもが楽しみながら本を戻すきっかけになると考えられます。
参考:幼稚園における学年進行に伴う環境の構成の変容に関する調査研究(PDF)
身近な場所への収納の配置
絵本を読むスペースのすぐそばに収納を配置しておくことが、元の位置へ戻す行動をスムーズにします。遊具や道具の大半を、子どもがすぐに使える身近な場所に配置することが、自発的な活動や片付けを促す環境構成の基準として評価されています。
絵本を読むスペースと収納場所の距離を近づけることで、片付けの心理的なハードルを下げやすくなります。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
親子の信頼関係を深める絵本を通した関わり方
絵本の時間は、読み聞かせるだけでなく、親子が心を通わせる大切な機会になると考えられます。発達に合わせた関わり方のコツを5つ説明します。
- 一対一の関わりによる信頼関係
- 子どもの指差しに対する丁寧な応答
- オノマトペを好む特徴に合わせた声かけ
- 膝に抱っこをして一緒に読む姿勢
- 絵本の内容からまねっこ遊びへの発展
一対一の関わりによる信頼関係
読み手と聞き手が一対一で密接に関わる絵本の時間は、子どもとの深い愛着関係を育む機会になります。乳幼児期における絵本は、特定の大人との信頼関係や愛着関係を形成するための有効な手段として位置づけられています。
絵本の時間を片付けるべき義務としてではなく、忙しい共働き生活の中で子どもとの愛着を深める貴重な時間として捉え直すことができます。
子どもの指差しに対する丁寧な応答
絵本を見ながら子どもが指し示す絵に対して、大人が丁寧に言葉を補い応答することが言葉の獲得につながります。子どもが知っている絵を見つけて指差した際に、大人が温かく応答し言葉を補うことで、子どもの言葉が豊かになり世界観が広がるとされています。
子どもが絵本をただ引っ張り出す行動も、意味のあるコミュニケーションの始まりとして温かく見守る余裕が生まれます。
オノマトペを好む特徴に合わせた声かけ
乳児期や低月齢期には、リズム感のある言葉や擬音を好む特徴があり、それらを真似て楽しむのに向いている時期です。乳児期は言葉のリズミカルな繰り返しやオノマトペを好む特徴があり、その音の響きに合わせて体を揺らしたり声を出したりして楽しむとされています。
難しく読み聞かせようとせず、短い言葉のリズムを楽しむだけでも、子どもが絵本に集中し散らかりにくくなる接し方につながります。
膝に抱っこをして一緒に読む姿勢
物理的に体を寄せ合う姿勢で絵本を共有することが、子どもの情緒的な安心感をもたらします。絵本の読み聞かせは、大人の膝に抱っこをしたり脇に座らせながら一緒に読む形が信頼関係を深めるうえで自然な方法とされています。
ソファやベッドでの抱っこ読書を取り入れることで、絵本を床に広げるエネルギーを静かなスキンシップへと転換しやすくなります。
絵本の内容からまねっこ遊びへの発展
絵本に登場する動物や話の展開を身体で模倣し、生活や遊びを発展させていくことが大切です。絵本を繰り返し読んでもらうことで、子どもは登場人物の真似をしたり、まねっこ遊びやごっこ遊びへ活動を発展させたりするようになるとされています。
絵本を読み終えたあとの片付け自体をまねっこ遊びに変えることで、子どもが自発的に本を戻す仕組みを作れます。
家庭での読書環境を充実させる工夫と支援
日常生活の中で自然に絵本に親しめる環境を維持するためには、家庭内の工夫に加えて地域の支援を活用することも考えられます。
- 自由に絵本に触れさせる読書環境
- 日常会話の中に絵本の言葉を取り入れる工夫
- 園や地域の絵本貸出サービスの活用
- 保育士との良好な関係性による支援
- おもちゃや絵本のリサイクル事業の利用
下の表は、家庭で取り入れやすい工夫と、それぞれの主な狙いを簡単に整理したものです。
| 工夫 | 主な狙い |
|---|---|
| 絵本貸出サービスの利用 | 手元の絵本の量を抑えて収納の負担を軽くする |
| 保育士への相談 | 園での環境づくりを家庭に取り入れるヒントを得る |
| リサイクル事業の利用 | 月齢に合わなくなった絵本を循環させる |
自由に絵本に触れさせる読書環境
親が管理しすぎず、子どもがいつでも自由に絵本に触れられる状態で置くことが読書への自発性を育みます。多くの養育者が、子どもの言語発達のために絵本に自由に触れさせることを日常的に心がけているとされています。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市
片付かないからといって絵本を完全に隠すのではなく、自由に触れさせつつ片付けやすい環境を維持することが大切だと考えられます。
日常会話の中に絵本の言葉を取り入れる工夫
日常の食事や遊んでいる時間の会話に絵本の言葉を登場させることが、言葉の発達を促します。家庭での短い会話やコミュニケーションが子どもの言語発達を促進することが示されており、食事や着替えの場面での心がけが有効とされています。
日常の忙しい時間でも絵本の内容を通した声かけをすることで、リビングを片付ける約束事もスムーズに通じやすくなります。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
園や地域の絵本貸出サービスの活用
家庭で大量の絵本を抱え込まず、地域や保育所の貸出サービスを利用することで収納の負担を抑えられます。親子が日常的に絵本に触れられるよう、保育所での絵本の貸出や絵本コーナーを設置するなどの取り組みが重要視されています。
リビングの本棚が溢れて雪崩が起きるのを防ぐために、園や図書館の貸出を賢く使う方法も選択肢になります。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
保育士との良好な関係性による支援
園での環境づくりを家庭に応用したり相談したりすることで、親の育児負担感を軽減できます。保育士と養育者の良好な関係性が養育態度に良い影響を与え、育児負担感の低下や家庭養育の質の向上につながることが示されています。
一人で片付けの悩みを抱え込まず、保育園での収納の工夫や子どもの行動を相談してみることで、気持ちが軽くなりやすいと考えられます。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
おもちゃや絵本のリサイクル事業の利用
不要になったりサイズが合わなくなったりした絵本を循環させることで、手元の絵本を無理なく維持できます。地域や施設において、絵本やおもちゃのリサイクル事業を実施し、循環を促す取り組みが行われています。
子どもの月齢に合わなくなった絵本を定期的に手放し、今必要な数冊だけをリビングに並べる整理の基準にできます。
参考:家庭環境が1〜2歳児の社会・情動的能力に及ぼす影響の検討|千葉市(PDF)
まとめ
絵本が散らかる原因は子どものわがままではなく、部屋の空間構成や絵本自体の形状といった物的環境に起因することが少なくないと考えられます。仕切りやカーペットで空間を区切り、ラベルなどの片付けやすい仕掛けを取り入れながら、園や地域の支援も上手に活用して、共働きの毎日でも無理のない絵本収納を目指しましょう。


