絵本の読み聞かせのコツをおさえると、子どもは物語の世界に入り込みやすくなり、情緒や言葉の発達にも良い影響が期待できます。見せ方や声の出し方、対話の工夫を身につけることで、明日の保育から自信を持って読み聞かせに取り組めます。
本記事では、絵本の読み聞かせに関して、見せ方のコツ、発声のコツ、対話のコツ、集中が途切れた際の対処のコツに加え、絵本選びのポイントについても紹介します。
絵本を見せる際の配置や姿勢のコツ
子どもが物語の世界に入り込みやすくなるよう、絵本の持ち方や見せ方を工夫することが大切です。次の5つのコツを紹介します。
- 絵をよく見る子どもの視線に合わせて位置を決める
- 絵本を固定して持つと視線の往復を妨げにくい
- 子どもの様子を見ながらめくるスピードを調整する
- 自分でめくりたがる行動は温かく見守る
- 大人数の前では絵本のサイズや距離を工夫する
絵をよく見る子どもの視線に合わせて位置を決める
眼球運動を用いた測定実験では、子どもが絵本を開いた際に最初に視線を留める割合は、絵が約80%、文字が約20%であることが分かっています。
絵が子どもの視線を惹きつける中心になりやすいため、全員から絵が見えやすい高さや角度を保つことが適していると考えられます。文字を追わせようとするより、絵を存分に見せる意識を持つと良いでしょう。
参考:眼球運動から見た子どもの絵本の読み方|CiNii Research
絵本を固定して持つと視線の往復を妨げにくい
子どもの眼球運動を追跡した研究では、視線が絵と文字を何度も往復しながら物語を解釈するパターンが見られています。
読み手が絵本を小刻みに動かすと、この視線の往復を妨げる可能性があります。両手でしっかりと絵本を固定して持つことが望ましいといえます。
参考:眼球運動から見た子どもの絵本の読み方|CiNii Research
子どもの様子を見ながらめくるスピードを調整する
子どもは絵本を読む際に、絵の細部を何度も確認しながら情報を処理しているとされています。
子どもの視線や表情を観察しながら、次のページへ移るタイミングを調整することが適していると考えられます。急いでめくると、視覚的な探索の時間を奪ってしまうことがあります。
参考:眼球運動から見た子どもの絵本の読み方|CiNii Research
自分でめくりたがる行動は温かく見守る
発達の初期段階では、でたらめにページをめくったり、先を見たくて早くめくったりする様子が見られ、その後、適切にめくれるようになる過程が確認されています。
子どもが急いでめくろうとしても、無理に制止せず、発達の過程として受け止める姿勢が大切です。
参考:絵本読み聞かせ場面の認識および発達順序体系を用いた発達段階推定|筑波大学大学院(PDF)
大人数の前では絵本のサイズや距離を工夫する
特別支援や集団保育の場では、後方の子どもや注目の維持が難しい子どもに向けて、大型絵本を活用したり、読み手との距離を近づけたりする工夫が行われています。保育室の広さや人数に合わせて、見せ方を柔軟に調整すると良いでしょう。
参考:「特別支援学校での読み聞かせ」の増訂版を発行しました。|東京都立図書館
絵本の読み聞かせにおける発声のコツ
過度な演技や不自然な演出を避け、子どもの情緒に寄り添う発声を意識することが大切です。次の5つのコツを紹介します。
- 穏やかな語りかけは子どもの脳をリラックスさせやすい
- 落ち着いたトーンは子どもの不安を和らげやすい
- スリルのある場面では声の高低で惹きつける
- 優しい声調を重ねると愛着や安心感が育ちやすい
- はっきりとした発音は語彙の習得を助けやすい
穏やかな語りかけは子どもの脳をリラックスさせやすい
脳血流測定を用いた実験では、読み聞かせを受動的に聞く際、自ら音読するときに比べて前頭前野の血流が減少することが分かっています。この生理的な変化は、子どもに快適さや癒やしを与えている可能性が考えられます。劇のように大げさに演じ分ける必要はなく、穏やかに語りかける意識を持つと良いでしょう。
参考:「絵本の読み聞かせ」の効果の脳科学的分析|J-STAGE
落ち着いたトーンは子どもの不安を和らげやすい
子どもの恐怖や不安といった感情を受け止め、和らげる働きを持つとされています。大声で感情を込めるよりも、落ち着いた一定のトーンで語りかけることが、感情を整える助けにつながる可能性があります。
スリルのある場面では声の高低で惹きつける
オバケや怪獣が登場するスリルのある絵本では、高めの声調よりも、少し低めで抑揚のある声調の方が、子どもの注意を惹きつけて集中を維持しやすいとされています。お話の性質に合わせて声の高低を意図的に変える工夫が役立ちます。
優しい声調を重ねると愛着や安心感が育ちやすい
心地よい語りかけを継続的に受けることは、子どもが周囲への信頼を抱き、他者への関心を育む発達の土台になるとされています。日々の読み聞かせは、子どもの心の安定と信頼関係の構築につながりやすいと考えられます。特別な技術よりも、続けること自体に意味があります。
はっきりとした発音は語彙の習得を助けやすい
言葉を習得する過程にある子どもにとって、読み手が正しい発音と言葉のモデルを示すことは、理解や模倣を促すうえで大切とされています。一音一音を丁寧に、聞き取りやすいスピードで発音することが、語彙の習得につながりやすくなります。早口にならないよう意識すると良いでしょう。
絵本の読み聞かせにおける対話のコツ
一方的に朗読するのではなく、問いかけや言葉のやり取りを交えることも大切です。次の5つのコツを紹介します。
- 問いかけを交えると言葉を覚える楽しさが広がりやすい
- 次の展開を推測させる問いかけで想像力を引き出す
- 気持ちを尋ねる問いで共感する力を育む
- 日常の体験と結びつける質問で物語を自分事にする
- 指差しに言葉を添えると語彙が広がりやすい
問いかけを交えると言葉を覚える楽しさが広がりやすい
大人が問いかけや応答を交えながら双方向で絵本を読み進める手法は「絵本共有」と呼ばれ、子どもの言語発達を促す有効な取り組みとされています。ただ静かに聞かせるだけでなく、対話を取り入れる意識を持つと、子どもの言葉の力を育みやすくなります。
次の展開を推測させる問いかけで想像力を引き出す
「このあしあとは誰のものかな」といった質問で次の展開を予測させることは、推論する力を高め、言葉の数を増やすために効果的と考えられています。子どもがワクワクしながらお話に参加できるよう、具体的な問いを準備しておくと役立ちます。
気持ちを尋ねる問いで共感する力を育む
登場人物の心情について質問を交えながら読むことは、ただ物語を聞き流す場合に比べて、感情への理解や共感力を高める可能性が考えられています。お話を通じて、子どもの心の成長を促す対話の技術として活用できます。
日常の体験と結びつける質問で物語を自分事にする
絵本を読み終えた後に日常の体験を振り返らせる発問を行うことで、子どもが自らの生活や他者との関わり方を見つめ直し、社会性を育む取り組みが行われています。物語を自分の生活と重ね合わせる問いかけを意識してみましょう。
指差しに言葉を添えると語彙が広がりやすい
子どもが絵本を指差した瞬間に大人が命名したり真似をしたりして応じる対話は、語彙の効率的な習得を支えやすいとされています。子どもの自発的な指差しを見逃さず、丁寧に応じる姿勢が大切です。
読み聞かせ中に集中が途切れた際の対処のコツ
子どもが私語を始めたり立ち歩いたりしても、穏やかに対応することができます。次の5つのコツを紹介します。
- 絵本に関連するつぶやきには丁寧に応答する
- 関係のない私語は視線や頷きで優しく見守る
- 集中が続かないときは要約して短く伝える
- 手遊びを挟むと集中を取り戻しやすくなる
- 立ち歩きが目立つときは一対一の時間を作る
絵本に関連するつぶやきには丁寧に応答する
読み聞かせの最中に絵本に関連した発言があった場合、進行を優先して無視するのではなく、肯定的な受け答えを返すことで、子どもは認められたと感じ、興味を継続しやすくなるとされています。発言を遮らず対話に活かす姿勢が大切です。
関係のない私語は視線や頷きで優しく見守る
物語と関係のない私語には、大声で叱ったり中断したりするのではなく、視線を合わせて頷いたり、手振りでそっと促したりすることで、リズムを崩さずに注意を戻す対応が実践されています。物語の心地よい流れを保つ意識を持つと良いでしょう。
参考:保育における集団に対する絵本の読み聞かせの意義|奈良教育大学
集中が続かないときは要約して短く伝える
特別支援や個別保育の実践では、子どもの集中度に合わせて絵本の文章を要約して伝える「ダイジェスト読み」が効果を上げています。長い物語を読み切ることにこだわらず、柔軟に工夫すると良いでしょう。
参考:「特別支援学校での読み聞かせ」の増訂版を発行しました。|東京都立図書館
手遊びを挟むと集中を取り戻しやすくなる
絵本をただ座って聞き続けることが難しい場面では、わらべ歌遊びや簡単な身体表現を組み合わせることで、緊張をほぐし再度お話への集中を促す支援が行われています。集中の限界が見えたら、遊びを挟む選択肢を持っておくと安心です。
参考:「特別支援学校での読み聞かせ」の増訂版を発行しました。|東京都立図書館
立ち歩きが目立つときは一対一の時間を作る
集団での読み聞かせに馴染めない子どもには、無理に集団のルールに合わせるのではなく、一対一で寄り添う時間を作ることで、絵本への心地よさを実感してもらうアプローチが大切とされています。個別の信頼関係づくりを優先する視点が役立ちます。
参考:「特別支援学校での読み聞かせ」の増訂版を発行しました。|東京都立図書館
読み聞かせに用いる絵本選びのポイント
子どもの発達段階や状況に適した絵本を選ぶことも、読み聞かせの大切な準備です。次の5つのコツを紹介します。
- 発達段階に合わせて絵本を選ぶと集中が続きやすい
- 幼児後期は少し複雑な展開の絵本を取り入れる
- 感覚の特性に配慮した絵本は関心を引きやすい
- 家庭で親しんだ絵本は警戒心を下げやすい
- 地域の機関と連携すると蔵書の幅が広がりやすい
下の表は、絵本への関わり方の目安を簡単に整理したものです。
| 段階 | 絵本への関わり方の目安 |
|---|---|
| 初期 | 絵や音を楽しむ段階 |
| 中期 | 指差しによるやり取りが増える段階 |
| 後期 | ストーリーの理解が進む段階 |
参考:絵本読み聞かせ場面の認識および発達順序体系を用いた発達段階推定|筑波大学大学院(PDF)
発達段階に合わせて絵本を選ぶと集中が続きやすい
子どもは年齢とともに、絵や音を楽しむ段階から、指差しによるやり取り、ストーリーの理解へと段階的に成長していくとされています。子どもの現状の発達段階を捉え、適切なステップの絵本を選ぶことが望ましいと考えられます。
参考:絵本読み聞かせ場面の認識および発達順序体系を用いた発達段階推定|筑波大学大学院(PDF)
幼児後期は少し複雑な展開の絵本を取り入れる
幼児後期になると、他者の表情から感情の変化を読み取る力が育まれ、少し複雑な物語や不思議な世界観を楽しむことで想像力がさらに広がるとされています、保育における集団に対する絵本の読み聞かせの意義(奈良教育大学))。年齢に応じて選書の幅を広げていくと良いでしょう。
参考:顔刺激を用いた認知的葛藤時の脳血流反応|北陸心理学会(PDF)
感覚の特性に配慮した絵本は関心を引きやすい
特別支援の実践では、触る絵本や音が鳴る絵本、繰り返しの展開が分かりやすい絵本など、五感で楽しめる絵本を実績のある図書リストから選ぶことが推奨されています。特性の異なる子どもが一緒に楽しめる選書を意識すると良いでしょう。
参考:「特別支援学校での読み聞かせ」の増訂版を発行しました。|東京都立図書館
地域の機関と連携すると蔵書の幅が広がりやすい
子どもたちの読書意欲を育むためには、外部のボランティア活動を受け入れたり、役割を調整する仕組みを整えたりして、組織的に読書環境を高める取り組みが重要とされています。一人で絵本を揃えようとせず、園全体や地域の力を借りる視点も役立ちます。
まとめ
絵本の読み聞かせは、見せ方や声の出し方、対話の工夫を積み重ねることが、子どもの情緒や言葉の発達を支える力になると考えられます。今日から、この記事で紹介したコツを一つずつ、明日の保育に取り入れてみてください。


