記憶力は知育玩具を使った遊びの中で育てやすい力であり、学習や友人関係の土台にもつながります。
本記事では、知育玩具で記憶力が高まる理由、年齢別の発達段階、玩具を選ぶ際のポイント、効果的な実践方法、おすすめの知育玩具について紹介します。
知育玩具で記憶力が高まる理由・メカニズム
知育玩具の遊びが記憶力に働きかける仕組みには、複数の要素が関わっています。ここでは、次の四つの視点からその理由を整理します。
- ワーキングメモリ(作業記憶)を使う遊びの効果
- 反復と想起による長期記憶への定着
- 視覚・触覚など複数感覚を使う記憶の強化
- 遊びの中の達成感が記憶の定着を促す仕組み
ワーキングメモリ(作業記憶)を使う遊びの効果
カードの並びやルールの手順を頭の中に保ちながら進める遊びは、ワーキングメモリを使う場面を自然につくります。神経衰弱のようにめくったカードの位置を覚えておく遊びや、複数の指示を順番通りにこなす遊びは、情報を一時的に保持しながら操作する練習になります。こうした遊びを繰り返すことで、日常生活での指示理解や作業の段取りにも良い影響が期待できます。
反復と想起による長期記憶への定着
一度覚えた内容も、繰り返し使わなければ忘れやすくなります。記憶を定着させるには、内容を眺め直すよりも、自分の力で思い出す作業のほうが効果的だと考えられます。岩手大学の研究では、約270語の文章を4回読み返す方法と、3回読んで1回はテスト形式で思い出す方法を比較したところ、1週間後の成績はテストを取り入れた方法のほうが優れていたという結果が示されています。知育玩具でも、同じ問題を繰り返し出題し、子ども自身に答えを思い出させる仕組みが記憶の定着を後押しします。
参考:憶えたければ思い出せ!:想起の学習促進効果|岩手大学
視覚・触覚など複数感覚を使う記憶の強化
知育玩具は、見る・触る・聞くといった複数の感覚を同時に使える点に特徴があります。カードの絵柄を目で確認し、木製ブロックの手触りを感じながら組み立てる遊びでは、一つの感覚だけに頼らずに情報を取り込めます。複数の感覚から入った情報は、記憶として結びつきやすくなると考えられており、遊びの中で自然に多感覚の刺激を受けられる点は知育玩具ならではの利点です。
遊びの中の達成感が記憶の定着を促す仕組み
正解にたどり着いたときの喜びや、前回より上手にできたという実感は、遊びを続ける原動力になります。楽しいという気持ちを伴った経験は記憶に残りやすく、次に同じ玩具で遊ぶときにも、以前の記憶を思い出しながら取り組めます。達成感を得やすい難易度に調整された知育玩具は、記憶を使う機会を継続的に生み出す点で役立ちます。
記憶力の発達段階と年齢に応じた遊びの特徴
記憶力の発達には年齢による特徴があり、遊びの難易度もそれに合わせる必要があります。ここでは、次の四つの年齢帯・観点から発達の特徴を整理します。
- 2〜3歳ごろの記憶の特徴と遊びの目安
- 4〜5歳ごろの記憶の広がりと遊びの目安
- 小学校低学年の記憶方略の発達と学習遊び
- 年齢に合わない難易度が与える影響
以下の表に、年齢帯ごとの記憶の特徴と遊びの目安をまとめます。
| 年齢帯 | 記憶の特徴 | 遊びの目安 |
|---|---|---|
| 2〜3歳ごろ | 目の前にある物や日課を短く覚える | 絵合わせ、簡単な絵本の読み聞かせ |
| 4〜5歳ごろ | 数分前の出来事や複数の指示を保持できる範囲が広がる | 神経衰弱、かるた、簡単なすごろく |
| 小学校低学年 | 覚え方を自分で工夫する力が育ち始める | ルールのあるボードゲーム、図鑑を使った遊び |
2〜3歳ごろの記憶の特徴と遊びの目安
2〜3歳ごろの子どもは、目の前にある物や毎日の生活の流れを少しずつ覚え始める時期です。長い説明を一度に覚えることは難しいため、短い言葉と繰り返しの動作を組み合わせた関わりが向いています。この時期は、絵本の読み聞かせや、絵合わせのような単純な遊びを通じて、覚えることそのものを楽しい経験にすることが遊びの目安になります。
4〜5歳ごろの記憶の広がりと遊びの目安
4〜5歳ごろになると、数分前の出来事や複数の指示を保持できる範囲が少しずつ広がります。神経衰弱やかるたのように、複数の情報を比べながら覚える遊びに取り組めるようになる時期です。この段階では、正解数を競うよりも、遊びを通じて覚え方の工夫に触れる機会を増やすことが遊びの目安になります。
小学校低学年の記憶方略の発達と学習遊び
小学校低学年になると、覚えたい内容を声に出して繰り返したり、関連づけて覚えたりといった、自分なりの覚え方の工夫が育ち始めます。この工夫は「記憶方略」と呼ばれ、学年が上がるにつれて種類が増えていきます。ルールのあるボードゲームや図鑑を使った学習遊びは、覚え方を自分で選びながら取り組める点で、この時期の発達に合った遊びといえます。
年齢に合わない難易度が与える影響
対象年齢よりも難しい玩具を与えると、子どもは覚える作業についていけず、遊び自体への関心を失いやすくなります。反対に、簡単すぎる玩具では新しい情報を覚える機会が少なく、力を伸ばす場面が限られます。年齢や発達の状況に合わせて難易度を見直すことが、記憶力を無理なく育てる工夫につながります。
記憶力を高めやすい知育玩具を選ぶ際のポイント
知育玩具を選ぶ際は、対象年齢や難易度の調整のしやすさなど、いくつかの視点を確認しておくと選びやすくなります。ここでは、次の四つのポイントを整理します。
- 子どもの発達段階に合った難易度設定
- 段階的にレベルを調整できる仕組み
- 繰り返し遊びたくなる工夫の有無
- 親子で一緒に取り組める設計
子どもの発達段階に合った難易度設定
知育玩具のパッケージには、対象年齢の表示があります。日本玩具協会が定める安全基準「STマーク」は14歳までの児童用玩具を対象としており、対象年齢の表示は安心して遊べる情報として重要な役割を持っています。記憶力を育てる目的で玩具を選ぶ際は、対象年齢の表示を最初の目安にしたうえで、実際の子どもの様子を見ながら難易度を調整することが選び方の基本になります。
参考:STマーク 玩具業界の自主規制による安全な玩具を表すマーク|政府広報オンライン
段階的にレベルを調整できる仕組み
同じ玩具でも、カードの枚数やルールの複雑さを変えられるものは、成長に合わせて長く使い続けられます。例えば神経衰弱であれば、使うカードの枚数を減らして始め、慣れてきたら枚数を増やす調整が可能です。段階的に難易度を上げられる仕組みを持つ玩具は、子どもの発達段階に合わせやすく、記憶力を伸ばす場面を長期間にわたって用意できます。
繰り返し遊びたくなる工夫の有無
記憶力は、一度の遊びだけでなく、繰り返しの中で育っていきます。絵柄がかわいらしい、勝敗がはっきりしている、短時間で一区切りつくといった工夫がある玩具は、子どもが自分から何度も手に取りやすくなります。繰り返し遊びたくなる工夫があるかどうかは、記憶力を育てるうえで見落としやすいものの、選ぶ際に確認しておきたい点です。
親子で一緒に取り組める設計
二人以上で遊べる玩具は、親子で一緒に取り組みながら記憶力を育てられる点が利点です。子どもだけで遊ぶ場合に比べて、大人が一緒に参加することで、覚え方のこつを言葉で伝えたり、できたことをその場で認めたりする機会が増えます。親子で向き合う時間が限られる家庭でも、短い時間で完結する対戦型の玩具であれば、日常の中に取り入れやすくなります。
知育玩具で記憶力を高める効果的な実践方法
知育玩具を選んだあとは、遊び方や関わり方によって記憶力の育ちやすさが変わります。ここでは、次の四つの実践方法を整理します。
- 短時間・複数回に分けた取り組み方
- 遊んだ後に振り返る習慣づくり
- 得意・不得意に応じた声かけの工夫
- 生活習慣(睡眠等)との組み合わせ
短時間・複数回に分けた取り組み方
子どもの集中できる時間は限られているため、一度に長く取り組むよりも、短時間の遊びを複数回に分けたほうが記憶に残りやすくなります。例えば、10分程度の神経衰弱を朝と夕方に一回ずつ行うだけでも、同じ内容に複数回触れる機会をつくれます。忙しい共働きの家庭でも、短い時間を積み重ねる形であれば、日常の中に取り入れやすくなります。
遊んだ後に振り返る習慣づくり
遊び終えたあとに「どのカードがどこにあったか覚えている?」と尋ねるなど、思い出す作業を挟むことは、記憶の定着を後押しする関わり方です。読み返すよりも思い出す作業のほうが記憶に残りやすいという知見を踏まえると、遊びの合間や終了後に振り返る時間を意識的に設けることが実践のこつになります。振り返りは長くする必要はなく、一言二言のやり取りで十分です。
参考:憶えたければ思い出せ!:想起の学習促進効果|岩手大学
得意・不得意に応じた声かけの工夫
子どもによって、覚えるのが得意な分野と苦手な分野は異なります。得意な分野では難易度を少し上げて挑戦を促し、苦手な分野では手順を細かく区切って一つずつ確認する声かけが向いています。できなかったことを指摘するよりも、できた部分を具体的に伝える声かけのほうが、遊びへの前向きな気持ちを保ちやすくなります。
生活習慣(睡眠等)との組み合わせ
覚えた内容を定着させるには、遊びそのものだけでなく、その後の睡眠の取り方も関係します。国立精神・神経医療研究センターの資料では、練習した日の夜に睡眠を取らないと、体で覚える手続き記憶の学習が成立しないことが示されています。知育玩具で新しい遊び方を覚えた日は、その夜にしっかり眠る生活リズムを意識することが、記憶の定着を支える実践方法の一つになります。
参考:睡眠と学習に関する近年の知見|国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
記憶力が高まる知育玩具のおすすめ8選
ここからは、記憶力を育てやすい知育玩具の種類を8つ整理します。年齢や好みに合わせて選ぶ際の参考にしてください。
- 神経衰弱(カードマッチング)ゲーム
- かるた・カードゲーム
- ジグソーパズル
- 積み木・ブロック
- すごろく・ボードゲーム
- 絵合わせ・仲間探しゲーム
- リズム・音まね遊具
- 図鑑・絵本と連動した遊び
神経衰弱(カードマッチング)ゲーム
裏返したカードの位置を覚え、同じ絵柄をそろえる神経衰弱は、ワーキングメモリを直接使う遊びの代表例です。カードの枚数を調整すれば、2〜3歳から小学校低学年まで幅広い年齢で楽しめます。対戦相手のめくったカードの位置も覚える必要があるため、遊ぶ回数を重ねるほど記憶を使う力が育っていきます。
かるた・カードゲーム
読み札と絵札を結びつけて覚えるかるたは、言葉と絵柄を同時に記憶する練習になります。何度も遊ぶうちに読み札の内容を覚え、読み上げの途中で絵札を取れるようになる過程は、記憶の定着を実感しやすい遊びです。ことわざや都道府県など、テーマ別のかるたを使えば、学習内容に結びつけた記憶の練習にもなります。
ジグソーパズル
完成した絵を思い浮かべながらピースを探すジグソーパズルは、形や色の特徴を覚えて照合する力を使います。一度取り組んだパズルをもう一度組み立てる際には、以前の記憶を頼りにピースの位置を思い出す場面も生まれます。ピース数を子どもの年齢に合わせて選ぶことで、無理なく取り組めます。
積み木・ブロック
見本の形を見ながら同じ形を組み立てる積み木遊びは、完成形を頭の中に保持しながら手を動かす練習になります。見本を隠してから記憶だけで組み立てる遊び方に発展させれば、より高いレベルでワーキングメモリを使う機会をつくれます。手先の感覚と視覚の両方を使う点も、記憶の定着を助ける要素です。
すごろく・ボードゲーム
ルールや手順を覚えて進めるすごろくやボードゲームは、複数の情報を同時に扱う練習になります。マスの効果やカードの内容を覚えておくことで、次の手を考える判断材料が増える点も特徴です。家族で順番にサイコロを振るような単純なルールから始め、慣れてきたら手順の多いゲームに移ることで、無理なく難易度を上げられます。
絵合わせ・仲間探しゲーム
同じ仲間の絵柄を集める絵合わせゲームは、複数の絵柄を見比べながら分類する力を使います。神経衰弱と似た要素を持ちながら、裏返さずに進める分だけ、より小さな年齢の子どもでも取り組みやすい遊びです。仲間分けの基準を自分で考える場面もあり、記憶と合わせて分類する力も育てられます。
リズム・音まね遊具
音の並びを聞いて同じ順番でまねするリズム遊具は、耳から入る情報を記憶する練習になります。目で見る情報とは異なる感覚を使うため、視覚を中心とした遊びと組み合わせることで、記憶の使い方に幅を持たせられます。音の数を少しずつ増やしていくことで、無理なく難易度を調整できます。
図鑑・絵本と連動した遊び
図鑑や絵本に出てきた生き物や乗り物をカードやフィギュアで再現して遊ぶことは、覚えた知識を別の場面で思い出すきっかけになります。読んだ内容をその場限りにせず、遊びの中で何度も思い出す機会をつくることで、知識としての記憶が定着しやすくなると考えられます。図鑑を見ながら答え合わせをする流れをつくれば、親子で一緒に取り組める活動になります。
まとめ
記憶力は、知育玩具を使った遊びの中で少しずつ育てられる力であり、年齢に合った玩具選びと日々の実践の積み重ねが定着を後押しします。今日の遊びの中から一つを選び、親子で無理のない範囲から始めてみましょう。
