知育玩具で我慢する力を育むには?選び方・実践方法を紹介

教育・知育

知育玩具を生活に取り入れると、子どもは順番を待つ場面や欲しいものを我慢する場面を遊びの中で繰り返し経験でき、我慢する力を無理なく育てられます。遊びながら身につけた自己抑制の経験は、家庭での生活習慣にも生かしやすくなります。

本記事では、知育玩具で我慢する力が身につく理由、年齢に応じた発達の特徴、玩具を選ぶ際のポイント、効果的な実践方法、おすすめの知育玩具について紹介します。

知育玩具で我慢する力が身につく理由・メカニズム

知育玩具が我慢する力を育てる背景には、心理学の研究で示されている仕組みが関わっています。ここでは、三つの観点からその理由を整理します。

  • 抑制機能という心の働きとの関係
  • 目的達成までの手順を体験する仕組み
  • 順番やルールの繰り返し体験がもたらす効果

抑制機能という心の働きとの関係

発達心理学の研究では、自己主張と自己抑制という二つの側面から幼児の自己制御機能が検討されてきました。水野・本城の研究では、平均三歳七か月の時点で気質や葛藤場面での行動を測定し、平均四歳一か月の時点で自己制御機能を測定した結果、新しい状況に積極的に関わる気質を持つ子どもほど自己主張的な自己制御機能が発達していたことが報告されています。自己抑制の力は、幼児期の日々の経験を通じて少しずつ育つ機能であり、知育玩具の遊びもその経験の一つになります。

参考:水野里恵・本城秀次「幼児の自己抑制機能:乳児期と幼児期の気質との関連」発達心理学研究第9巻第2号|日本発達心理学会(J-STAGE)

目的達成までの手順を体験する仕組み

パズルや積み木のように、完成までに複数の手順を必要とする知育玩具は、目の前の一手だけでなく最終的な完成形を意識しながら取り組む経験を与えます。すぐに結果が出ない遊びに繰り返し取り組むことで、子どもは目標に向かって手を止めずに取り組む感覚をつかんでいきます。この経験は、欲求をすぐに満たそうとせず、完成という先の結果を見据えて行動を選ぶ練習になります。

順番やルールの繰り返し体験がもたらす効果

すごろくやカードゲームのように順番が決まっている遊びでは、自分の番が来るまで待つ経験を繰り返せます。順番を守るという簡単なきまりを繰り返し体験することは、欲求をいったん脇に置いて行動を調整する練習になります。遊びの中で得た「待てば自分の番が来る」という見通しは、日常生活で順番を守る場面にも生かされていきます。

我慢する力の発達段階と年齢に応じた遊びの特徴

我慢する力は年齢とともに段階的に育ちます。ここでは、四つの年齢区分に沿って発達の特徴と遊びの目安を整理します。

  • 2〜3歳ごろの自己主張と自己抑制のバランス
  • 3〜4歳ごろの気持ちの調整の芽生え
  • 4〜5歳ごろの規範意識とルール理解
  • 5〜6歳ごろに広がる個人差

2〜3歳ごろの自己主張と自己抑制のバランス

この時期の子どもは、自分の意思をはっきり主張する自己主張と、欲求を抑える自己抑制の両方が育ち始める段階です。発達心理学研究では、平均三歳七か月の幼児を対象に気質や葛藤体験を調べており、この時期の子どもは状況によって自己主張と自己抑制のどちらが優位に働くかが変わりやすいことが示されています。知育玩具を使う際は、我慢だけを求めるのではなく、子どもの「やりたい」という気持ちも尊重しながら遊びを進める配慮が役立ちます。

参考:水野里恵・本城秀次「幼児の自己抑制機能:乳児期と幼児期の気質との関連」発達心理学研究第9巻第2号|日本発達心理学会(J-STAGE)

3〜4歳ごろの気持ちの調整の芽生え

四歳前後になると、自分の気持ちを言葉で表しながら、我慢しなければならない場面を少しずつ理解できるようになります。感情や思考を制御する力はこの時期から段階的に発達していくと考えられており、知育玩具を使った短時間のルール遊びは、気持ちの調整に取り組みやすい遊びといえます。この段階では、待つ時間を長く設定しすぎず、数分程度で区切りをつけられる遊びから始めるとよいでしょう。

4〜5歳ごろの規範意識とルール理解

四歳から五歳にかけては、集団の中できまりを理解し、自分の気持ちを調整しながら守ろうとする姿が見られるようになります。幼稚園教育要領では、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の一つとして「自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる」姿が示されています。きまりを守る経験を重ねることは、我慢する力が生活の中に根づいていく手がかりになります。

参考:幼稚園教育要領|文部科学省

5〜6歳ごろに広がる個人差

五歳から六歳にかけては、自己制御の発達に個人差が広がっていく時期です。京都大学の研究グループが三歳から六歳の子ども81人を対象に行った調査では、三歳から四歳の時点では見られなかった遺伝的要因の影響が、五歳から六歳になると認知的柔軟性のスコアに表れ始めることが示されました。この結果は、同じ年齢でも子どもによって自己抑制の育ち方に差が出やすくなることを裏づけています。知育玩具を選ぶ際は、年齢だけでなく目の前の子どもの様子に合わせて難易度を調整する視点が役立ちます。

参考:子どもの自制心、遺伝的影響が見え始めるのは5歳頃から|京都大学

我慢する力を育みやすい知育玩具を選ぶ際のポイント

知育玩具を選ぶ際は、我慢する力を育てやすい特徴を意識すると選びやすくなります。ここでは四つの観点から選び方のポイントを整理します。

  • 完成までに複数の工程を要する玩具
  • 勝敗が出るまで時間がかかる玩具
  • 順番交代を前提とするルール
  • 難易度を調整できる玩具

完成までに複数の工程を要する玩具

ジグソーパズルや組み立て式のブロックのように、完成までに複数の工程を必要とする玩具は、途中で投げ出さずに取り組む経験を積むのに適しています。工程が多い玩具に取り組む中で、子どもは目の前の作業と最終的な完成形の両方を意識するようになります。年齢に対して工程数が多すぎる玩具を選ぶと途中で集中が切れやすくなるため、対象年齢の目安を参考に選ぶことが役立ちます。

勝敗が出るまで時間がかかる玩具

すごろくやボードゲームのように、勝敗が決まるまでにある程度の時間がかかる玩具は、結果が出るまで気持ちを保つ練習になります。途中経過だけで一喜一憂せず最後まで取り組む経験は、我慢する力を育てるうえで役立ちます。対象年齢が低いほどゲームの所要時間が短いものを選ぶと、子どもが無理なく最後まで取り組めます。

順番交代を前提とするルール

複数人で順番に手番を交代しながら進める玩具は、自分の番以外の時間を待つ経験を自然に積める点が特徴です。順番を守るというシンプルなきまりのある遊びを繰り返すことで、待つことへの抵抗感が少しずつ和らいでいきます。家族で一緒に遊ぶ際は、順番を守れた場面を具体的に言葉で伝えると、子どもが待つことの意味を理解しやすくなります。

難易度を調整できる玩具

知育玩具の中には、対象年齢や子どもの発達段階に合わせて難易度を調整できるものがあります。難易度を子どもの実力に合わせて選ぶと、我慢する場面が適度な長さに収まり、無理なく取り組めます。難しすぎる玩具は途中で集中が切れる原因になりやすいため、まずは短時間で達成できる設定から始める進め方が役立ちます。

知育玩具で我慢する力を育む効果的な実践方法

知育玩具を我慢する力の育成に生かすには、遊び方や関わり方にも工夫が必要です。ここでは四つの実践方法を整理します。

  • 待つ場面を遊びに組み込む工夫
  • 達成までの見通しを言葉にする関わり方
  • 待てたことを認める声かけ
  • 習慣化による積み重ね

待つ場面を遊びに組み込む工夫

すごろくやカードゲームを選ぶ際は、自分の番が来るまで待つ場面が自然に含まれる遊び方を意識すると効果的です。待つ時間を最初から長く設定するのではなく、数分程度で自分の番が回ってくる遊びから始めると、子どもが無理なく取り組めます。慣れてきたら参加人数を増やしたり遊ぶ回数を重ねたりして、少しずつ待つ時間を延ばしていく進め方も役立ちます。

達成までの見通しを言葉にする関わり方

パズルやすごろくに取り組む際、あと何手で完成するか、あと何回で自分の番が来るかを言葉にして伝えると、子どもは見通しを持ちやすくなります。先の見通しを具体的な言葉で示すことは、我慢する時間を子どもにとって分かりやすい単位に区切る効果があります。見通しが持てると、子どもは待つ時間を漠然とした不安ではなく、区切りのある時間として受け止めやすくなります。

待てたことを認める声かけ

子どもが順番を守れた場面や欲求を抑えられた場面では、その行動を具体的な言葉で認めて伝えることが役立ちます。「順番を守って待てたね」のように行動そのものを言葉にして伝えると、子どもは何が評価されたのかを理解しやすくなります。待てた経験を積み重ねて認められることで、子どもは我慢することへの前向きな気持ちが育っていきます。

習慣化による積み重ね

京都大学の研究グループが行った実験では、日本の子どもは食べ物を報酬とする場面でより長く待てる傾向があり、米国の子どもは贈り物を報酬とする場面でより長く待てる傾向があることが示されました。この結果は、我慢する力が生まれつきの能力だけでなく、日常生活の習慣によって支えられることを示しています。食事の前に「いただきます」を言うまで待つなど、生活の中の小さな習慣を大切にすることも、遊びと同じように我慢する力を育てる土台になります。

参考:子どもの満足遅延を習慣が支える―マシュマロとプレゼント、長く「待てる」のはどっち?―|京都大学

我慢する力が身につく知育玩具のおすすめ9選

ここでは、我慢する力を育てやすい知育玩具を九つ取り上げます。年齢や遊び方の特徴を表にまとめたので、選ぶ際の参考にしてください。

玩具名目安年齢我慢する力との関わり
ジグソーパズル3歳ごろから完成までの工程に粘り強く取り組む
積み木2歳ごろから崩さないよう慎重に手順を踏む
すごろく3歳ごろから自分の番まで順番を待つ
トランプ・かるた4歳ごろから手番や札が出るまで待つ
協力型ボードゲーム5歳ごろから仲間の手番を待ちながら協力する
ドミノ4歳ごろから倒す楽しみを最後まで我慢する
植物栽培キット4歳ごろから結果が出るまで気持ちを保つ
貯金箱5歳ごろから欲しいものを先延ばしにする
魚釣りおもちゃ2歳ごろから釣れるまで待つ動作を練習する
  • ジグソーパズル
  • 積み木
  • すごろく
  • トランプ・かるた
  • 協力型ボードゲーム
  • ドミノ
  • 植物栽培キット
  • 貯金箱
  • 魚釣りおもちゃ

ジグソーパズル

ジグソーパズルは、完成までに多くのピースを根気よくはめ込んでいく玩具です。ピースを試行錯誤しながら完成に近づける過程は、目の前の一手だけでなく最終的な完成形を意識する経験になります。対象年齢に応じてピース数を選べるため、子どもの発達段階に合わせて難易度を調整しやすい点も特徴です。

積み木

積み木は、崩れないように一つずつ丁寧に積み上げていく玩具です。高く積み上げるほど慎重さが求められるため、勢いに任せず手順を踏んで取り組む経験になります。年齢が上がるにつれて複雑な形を目指せるため、長く使い続けられる玩具でもあります。

すごろく

すごろくは、さいころの出た目に従って順番にこまを進める玩具です。自分の番以外は待つ時間になるため、順番を守りながら待つ経験を繰り返し積めます。マス目の数やルールを調整すれば、対象年齢の幅広い子どもと一緒に楽しめます。

トランプ・かるた

トランプやかるたは、自分の手番や読み札を待つ場面が多く含まれる玩具です。次の札や自分の番を待つ間、気持ちを落ち着けて待つ練習になります。ルールが比較的簡単なため、未就学児から取り組みやすい点も特徴です。

協力型ボードゲーム

協力型ボードゲームは、勝敗を競うのではなく、参加者全員で目標の達成を目指す玩具です。仲間の手番を待ちながら、自分の行動が全体にどう影響するかを考える経験になります。友達や家族と一緒に取り組む中で、待つことと協力することの両方を練習できます。

ドミノ

ドミノは、牌を並べたあとに倒して楽しむ玩具です。倒す瞬間の楽しさを我慢しながら、牌を丁寧に並べ終えるまで作業を続ける経験になります。並べる工程に時間がかかるほど、完成までの我慢が求められる遊びです。

植物栽培キット

植物栽培キットは、種をまいてから収穫や開花までに日数がかかる玩具です。すぐに結果が出ない点が特徴で、成長を見守りながら気持ちを保つ経験になります。水やりなどの世話を続ける中で、先の結果を見据えて行動し続ける姿勢が身についていきます。

貯金箱

貯金箱は、お金を貯めてから使うという先延ばしの経験を体験できる道具です。欲しいものをすぐに買わず、目標額まで貯めてから使うという流れを体験できます。目標額を子どもと一緒に決めておくと、見通しを持って取り組みやすくなります。

魚釣りおもちゃ

魚釣りおもちゃは、釣り針を魚に近づけて釣り上げるまで待つ動作を繰り返す玩具です。狙った魚がかかるまで焦らず待つ経験を、遊びの中で楽しみながら積み重ねられます。対象年齢の低い子どもでも扱いやすく、待つ練習の入り口として取り組みやすい玩具です。

まとめ

知育玩具を通じた我慢する力の育ちは、遊びの中で順番を待つ経験や欲求を先延ばしにする経験を積み重ねることで少しずつ形づくられます。今日の遊びの中に、子どもの発達段階に合った待つ場面を一つ取り入れてみましょう。