知育玩具で感情コントロールを育むには?選び方・実践方法を紹介

教育・知育

知育玩具を使った遊びは、幼児期の感情コントロールを育てる土台になります。日々の遊びの中に、怒りや悲しみといった気持ちに気づき、自分で落ち着きを取り戻す力を育てる仕組みを取り入れられます。

本記事では、知育玩具で感情コントロールが身につく理由、発達段階に応じた遊びの特徴、玩具選びのポイント、家庭での実践方法、おすすめの玩具について紹介します。

知育玩具で感情コントロールが身につく理由・メカニズム

知育玩具の遊びが、なぜ感情コントロールの育ちにつながるのかを整理します。ここでは、遊びが情緒に働きかける仕組みを四つの観点で説明します。

  • 遊びが情緒の安定を生む仕組み
  • ごっこ遊びによる感情の疑似体験
  • 実行機能と感情調整の関係
  • 感情語彙の獲得と自己理解

遊びが情緒の安定を生む仕組み

こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」では、遊びについて「言語や数量等の感覚などの認知的スキルと、創造性や好奇心、自尊心、想像力や思いやり、やり抜く力、相手や現実の状況と折り合いをつける力などの社会情動的スキルの双方を育む」機能があると説明されています。知育玩具は、この遊びの機能を家庭でも取り入れやすい形にした道具です。決まった正解を探すだけでなく、うまくいかない場面や待つ場面が自然に組み込まれているため、遊びながら気持ちを調整する経験を重ねられます。

参考:幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン|こども家庭庁

ごっこ遊びによる感情の疑似体験

ごっこ遊びでは、子どもが役になりきることで、実際の生活では経験しにくい感情を安全な形で体験できます。お店屋さんごっこで断られる役を演じたり、お医者さんごっこで痛みをこらえる役を演じたりする中で、悲しみや不安といった気持ちの動きに触れられます。遊びという枠組みの中であれば、感情の高まりを現実より穏やかな形で受け止めやすく、気持ちを立て直す練習の機会になります。

実行機能と感情調整の関係

白梅学園大学の無藤隆氏が文部科学省の検討会に提出した資料では、非認知面のうち「感情のコントロールと思考のコントロール(とりわけ実行機能)が重要であり、その顕著な発達が4歳から6歳に見られる」と示されています。実行機能(じっこうきのう。目的に向けて自分の考えや行動を調整する働き)は、感情が高ぶった場面で衝動的な行動を抑え、別の対応を選び直す働きを支えます。知育玩具の中でも、順番やルールがある遊びは、この実行機能を使う場面を繰り返し用意してくれます。

参考:幼児教育の基本となる乳幼児の発達と遊びと学びの特徴|文部科学省(PDF)

感情語彙の獲得と自己理解

神戸大学の近藤龍彰氏による研究整理では、幼児は2歳から3歳ごろに基本的な情動語と表情を対応させられるようになり、4歳から5歳ごろには喜び・怒り・悲しみの表情をラベリングできるようになると示されています。自分の状態を言い表す言葉を増やすことは、気持ちを言葉で表現する力を育てるだけでなく、今の自分がどのような状態にあるかを客観的に捉える助けにもなります。感情を指す言葉を扱う知育玩具は、この語彙の獲得を支える役割を果たします。

参考:幼児期の情動理解の発達研究における現状と課題|神戸大学学術成果リポジトリ

感情コントロールの発達段階と年齢に応じた遊びの特徴

感情コントロールの育ち方には、年齢に応じた段階があります。ここでは、1歳から6歳までの発達の流れを四つの時期に分けて整理します。

  • 1〜2歳ごろの情動表出と遊びの特徴
  • 3〜4歳ごろのごっこ遊びと感情の芽生え
  • 4〜5歳ごろの情動抑制と社会的表示規則
  • 5〜6歳ごろの多義的な感情理解とルール遊び

1〜2歳ごろの情動表出と遊びの特徴

無藤氏の資料では、0歳から1歳ごろは主に直感的で身体的な反応が中心となり、2歳から3歳ごろにかけて頭の中でものごとを思い浮かべる表象機能(ひょうしょうきのう。目の前にないものを頭の中に思い浮かべる働き)が発達し始めるとされています。この時期の子どもは、うまくいかないことへの不満をそのまま泣きや動作で表す場面が多く見られます。積み木を崩して遊ぶような単純な操作の遊びを通して、自分の動きと結果のつながりを確かめながら、気持ちの動きを少しずつ体で覚えていく段階です。

参考:幼児教育の基本となる乳幼児の発達と遊びと学びの特徴|文部科学省(PDF)

3〜4歳ごろのごっこ遊びと感情の芽生え

Child Research Netがまとめた幼児の感情発達に関する解説では、3歳児はプレゼントを開けたときに相手がいないとがっかりした表情を見せる一方、周囲への配慮を意識した表情の調整はまだ難しいと述べられています。近藤氏の研究整理でも、3歳前後から単純な状況をもとに基本的な情動を推測する力が芽生え始めるとされます。この時期はごっこ遊びが盛んになる時期でもあり、役になりきる遊びを通して、うれしい・かなしいといった気持ちの違いに触れる機会が増えていきます。

参考:幼児の感情発達|Child Research Net

4〜5歳ごろの情動抑制と社会的表示規則

専修大学石巻専門学校の平川久美子氏らが1,068名の幼児を対象に行った調査では、4歳から5歳にかけて自分の情動をより抑制するようになり、怒りや悲しみといった否定的な情動を表情や言葉であまり表現しなくなる傾向が示されています。Child Research Netの解説でも、4歳児は相手の前で感情を隠して微笑み、感謝の気持ちをきちんと言葉にする例も見られます。これは、周囲の状況に合わせて感情の表し方を調整する「社会的表示規則」を学び始める時期にあたります。

参考:幼児期における情動発達の特徴―年齢と性による違い―|専修大学石巻専門学校

5〜6歳ごろの多義的な感情理解とルール遊び

近藤氏の研究整理によると、5歳から6歳ごろには複数の解釈が可能な多義的な状況を理解し始め、驚きや恐れ、嫌悪といったより複雑な情動も読み取れるようになるとされています。この時期は、勝ち負けやルールのあるボードゲームを楽しめるようになる時期とも重なります。負けたときに湧き上がる悔しさを抱えながらも、ルールの中で気持ちを立て直す経験を重ねることで、複雑な感情を扱う力が育っていきます。

参考:幼児期の情動理解の発達研究における現状と課題|神戸大学学術成果リポジトリ

年齢ごとの特徴を、遊びの例とあわせて次の表に整理します。

年齢の目安感情コントロールの特徴相性の良い遊びの例
1〜2歳ごろ不満をそのまま泣きや動作で表す積み木などの単純な操作遊び
3〜4歳ごろ状況から基本的な情動を推測し始めるごっこ遊び、ままごと
4〜5歳ごろ感情の表し方を周囲に合わせ始める表情カード、パペット遊び
5〜6歳ごろ複雑な情動やルールを理解し始める勝ち負けのあるボードゲーム

感情コントロールを育みやすい知育玩具を選ぶ際のポイント

知育玩具を選ぶときに確認しておきたい観点を四つにまとめます。年齢や安全性だけでなく、感情に触れやすい仕掛けがあるかどうかも選び方の基準になります。

  • 対象年齢と安全基準の確認
  • 感情を言葉にしやすい仕掛け
  • 順番待ちや協力を伴う設計
  • 家庭で継続しやすい難易度設定

対象年齢と安全基準の確認

日本玩具協会が運用するSTマークは、13歳までの子ども向け玩具を対象に、形状や材質、強度、有害物質の有無などを「ST-2016」という基準に基づいて検査する制度です。メーカーは対象年齢を明記することが求められており、保護者はこの表示を確認することで、発達段階に合った安全な玩具を選びやすくなります。感情コントロールを育てる目的で玩具を選ぶ場合も、まずは対象年齢と安全基準を満たしているかを確認することが基本です。

参考:STマークについて|日本玩具協会

感情を言葉にしやすい仕掛け

表情のイラストが描かれたカードや、気持ちを表す言葉が添えられたボードゲームは、遊びながら感情語彙に触れる機会を作ります。子どもが自分の状態を指させたり、選んだりできる仕掛けがあると、言葉にしにくい気持ちも遊びの中で表現しやすくなります。玩具を選ぶ際は、勝ち負けや正解だけを競う内容にとどまらず、気持ちを言葉にする場面が組み込まれているかどうかも確認するとよいでしょう。

順番待ちや協力を伴う設計

すごろくやボードゲームのように、順番を待つ場面や、他の子どもと協力する場面がある玩具は、気持ちを立て直す練習の機会を自然に作ります。自分の番が来るまで待つ経験や、思い通りにいかない結果を受け止める経験は、実際の生活の中でも起こる場面と重なります。一人で完結する遊びだけでなく、順番待ちや協力を伴う遊びを組み合わせることで、感情コントロールを使う場面を増やせます。

家庭で継続しやすい難易度設定

難易度が高すぎる玩具は、うまくいかない場面が続き、かえって気持ちの乱れを引き起こしやすくなります。反対に簡単すぎる玩具は、感情を調整する場面自体が生まれにくいという課題があります。子どもの発達段階に対して少し背伸びをする程度の難易度を選ぶと、うまくいかない場面と乗り越えられる場面のバランスが取れ、家庭でも続けやすくなります。対象年齢の表示を目安にしながら、実際の子どもの様子を見て調整することが大切です。

知育玩具で感情コントロールを育む効果的な実践方法

知育玩具を使う際に、家庭で取り入れやすい関わり方を四つにまとめます。玩具そのものだけでなく、遊びの前後の関わり方が感情コントロールの育ちを左右します。

  • 遊びの前後で気持ちを言葉にする関わり方
  • 負けた場面での声かけの工夫
  • 生活の中で感情カードを使う習慣
  • 保護者自身の感情表現を見せる関わり

遊びの前後で気持ちを言葉にする関わり方

Child Research Netの解説では、保育者が幼児の気持ちを認めたうえで、言葉や行動で解決できることを教える関わり方が紹介されています。家庭でも、遊びの最中や終わったあとに「悔しかったね」「楽しかったね」と気持ちを言葉にして伝えると、子どもは自分の状態を言葉と結びつけやすくなります。気持ちを否定せずにいったん受け止めてから、次にどうするかを一緒に考える順番を意識すると、子どもが自分で感情を立て直す練習につながります。

参考:幼児の感情発達|Child Research Net

負けた場面での声かけの工夫

ボードゲームなどで負けた場面は、悔しさや悲しさが表れやすい瞬間です。この場面で結果だけを評価するのではなく、悔しい気持ちそのものを認める声かけをすると、子どもは負けた経験を否定的なものとしてだけ捉えずに済みます。そのうえで、次はどう取り組むかを子ども自身に考えさせる問いかけを加えると、気持ちを立て直しながら次の行動につなげる練習として役立ちます。

生活の中で感情カードを使う習慣

感情カードは、ゲームの時間だけでなく、日常のさまざまな場面で使うことで効果を発揮しやすくなります。朝の身支度や夕食前など、決まったタイミングで「今どんな気持ち」と尋ね、カードを指させる習慣を作ると、子どもは自分の状態に気づく機会を日常的に持てます。気持ちを確認する時間を生活の中に組み込むことで、感情に気づく習慣そのものが育っていきます。

保護者自身の感情表現を見せる関わり

子どもは、身近な大人の感情の表し方を見ながら、自分なりの表し方を少しずつ身につけます。保護者が自分の気持ちを「今は少し疲れているから休憩するね」のように言葉で説明する場面を見せると、子どもは感情を言葉で扱う具体的な手本を得られます。感情を隠すのではなく、適切な形で表す姿を見せることが、子ども自身の感情コントロールを育てる関わりの一つになります。

感情コントロールが身につく知育玩具のおすすめ8選

感情コントロールを育てる目的に合わせて選びやすい玩具を、種類ごとに八つ整理します。年齢や家庭の状況に合わせて組み合わせて取り入れられます。

  • 表情カード・きもちボードゲーム
  • ごっこ遊びセット
  • 表情パペット・ぬいぐるみ
  • 絵本連動型の感情教材
  • すごろく形式のボードゲーム
  • 協力型ボードゲーム
  • 粘土・砂遊びなどの感触遊び玩具
  • タイマー付き知育玩具

表情カード・きもちボードゲーム

表情のイラストと感情を表す言葉が組み合わされたカードは、自分や相手の気持ちを言葉と結びつける練習に向いています。カードを選んで今の気持ちを伝えるやり取りを通して、感情語彙が少しずつ増えていきます。3歳ごろから使い始めやすく、年齢が上がるにつれて複雑な感情を扱うカードに広げていけます。

ごっこ遊びセット

お店屋さんごっこやお医者さんごっこなど、役になりきる遊びのセットは、実際の生活では体験しにくい感情を安全な形で疑似体験する機会を作ります。断られる役や我慢する役を演じることで、悲しみや不安といった気持ちの動きに触れられます。3歳から4歳ごろのごっこ遊びが盛んになる時期に取り入れやすい玩具です。

表情パペット・ぬいぐるみ

パペットやぬいぐるみは、子どもが自分の気持ちを直接言葉にしにくいときに、人形の気持ちとして代わりに語らせる遊びに使えます。「くまさんは今悲しいんだって」のように第三者の視点を借りることで、子ども自身の気持ちも表現しやすくなります。2歳ごろから使える玩具で、年齢を問わず長く親しみやすいのも特徴です。

絵本連動型の感情教材

絵本の登場人物の気持ちを一緒に考える教材は、物語という枠組みの中で感情理解を深める機会になります。登場人物がどのような気持ちだったかを問いかけながら読み進めることで、状況と感情を結びつけて考える力を育てられます。3歳以上を目安に、対象年齢に合った内容を選ぶことが大切です。

すごろく形式のボードゲーム

すごろくは、順番を待つ場面や、思い通りに進めない結果を受け止める場面が自然に組み込まれた遊びです。自分の番が来るまで待つ経験や、思わぬマスに止まる経験を通して、気持ちを立て直す練習を重ねられます。4歳以上を目安に、ルールを理解しながら楽しめる年齢で取り入れやすい玩具です。

協力型ボードゲーム

勝ち負けを争うのではなく、参加者全員で目標を目指す協力型のボードゲームは、感情の高ぶりを他者と分かち合いながら調整する経験を作ります。仲間と気持ちを共有しながら結果を受け止める経験は、共感の育ちにもつながると考えられます。5歳以上を目安に、複数人でのやり取りを楽しめる年齢で取り入れやすい玩具です。

粘土・砂遊びなどの感触遊び玩具

粘土や砂といった感触を伴う遊びは、手を動かす作業に集中することで、高ぶった気持ちを落ち着ける効果が期待できます。形を作っては崩すという動作を繰り返す中で、気持ちの高ぶりが少しずつ落ち着いていく感覚を体で覚えられます。1歳ごろから年齢を問わず取り入れやすい遊びです。

タイマー付き知育玩具

砂時計やタイマーがついた知育玩具は、遊びの終わりや順番の交代を目に見える形で示してくれます。終わりの見通しが立つことで、気持ちの切り替えにかかる負担を減らしやすくなります。遊びの区切りを自分で確認できる仕組みは、3歳以上の子どもが見通しを持って気持ちを切り替える練習に役立ちます。

まとめ

知育玩具を使った遊びは、感情に気づき、自分で立て直す力を育てる機会を家庭にもたらします。子どもの年齢や様子に合わせて玩具を選び、遊びの前後の声かけを工夫しながら、日々の遊びの中に感情コントロールを育てる時間を取り入れてみてください。